top>活動紹介>酒蔵見学>清洲桜醸造

4/5

日本酒の会 sake nagoya 「酒蔵見学」(清洲桜醸造)の報告

とき:2009年2月7日(土)
酒蔵:清洲桜醸造(愛知県清須市清洲1692)

さて、出品酒等の大吟醸は、機械による自動化とは全く異なり、手作業による伝統的な造を行っている。
限定吸水、蒸しは甑、仕込みはサーマルタンク、搾りは袋づりである。

サーマルタンク

1階の奥の吟醸コーナーでは、今年の出品酒の仕込みが行われていた。

梯子を登り中を覗くと、山田錦40%精米・18号酵母の醪が香り高い吟醸香を立ち上らせている。
当然なのだが、出品酒・大吟醸は鬼ころし等の自動化された造りとは別の工程で伝統的な手法で行われていた。

連続自動蒸米機

 

造の見学が終了した後、研究室で3種類の利き酒。
左から夢山水55%精米の吟醸酒、中は大吟醸楽園19BY、右は隠し吟醸 20BY。

利き酒

新製品なのか、リキュールとスピリッツを利かせていただいた。
リキュールはグレープフルーツ。果汁の味がフレッシュで旨味が濃い。
スピリッツはレモンベースで、軽い飲み口の爽やかな味。
日本の酒税法では、「リキュール類」の定義は「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの)」だそうで、2度未満はスピリッツ扱いになるとのことである。

スピリッツ

 

蔵見学を終えて、関心事に対する答が見えてきたように思われる。

  1. 紙パックの鬼ころしも特定名称酒と同じように造られていることが理解できた。機械化は省力化と大量処理の為であり、造り方は同じである。
  2. 鬼ころしと大吟醸楽園は、造る設備は全く異なっている。鬼ころしは機械化された設備で造られるが、楽園は伝統的な手造りである。しかし、楽園の造りの技術があってこそ機械化が可能であって、最高の酒を造る技術がないところにいくら機械を導入しても美味い酒を造ることは出来ない。
    紙パックの鬼ころしと金賞受賞の楽園を一本に繋いでいるものは造る人の感性・官能である。機械が造るのではなく人が機械に造らせるのである。どう造るか機械に教える人が在って機械は造ることが出来る。
    コストの制約が大きい中、造られた原酒をブレンドし、調整・調味し、加水し、狙った商品にする事は、技術と感性が無ければ出来る事ではないだろう。今年の造りは上手く行きましたと言うようなお天気任せの造りでは不可能な事である。
    他社の紙パック酒あるいは本醸造のものでも添加アルコールの味がはっきりとしているものがある。締まりのない酸味とドロリとした舌触りを感じることがあるが、鬼ころしも隠し吟醸もアルコールの存在を感じることはなくスッキリとしている。
    K杜氏(製造部長)に添加アルコールは寝かして熟成させているのかお聞きしたが、入荷したものをそのまま使用しているとの話であった。両者を分けるものは、結局、チューニング能力・感能の差なのだろう。
  3. 同社のHPには「消費者ニーズに添った商品」、「最新の設備・技術により、品質第一をモットーに精魂こめて、清酒造りを行っています。」と書かれている。
    人々が数ある商品から選び、自分のお金を出してその商品を購入するにはそれだけの理由がある。造り手の指向するものが消費者に届くから選ばれるのだ。
    K杜氏の話にこんな事があった。
    「2リットル1000円前後の価格帯の酒のアルコール度数は13~14度であるが、鬼ころしは14.8度である。」

ただ添加アルコールを増やしただけでは、味のバランスが崩れてしまう、昔の三増酒になってしまう。技術・感性があって、味わいの厚さ・旨味・コク・後口の良さを維持しながらアルコール濃度を1度上げる事が出来る。
その味の差に消費者はお金を出すのである。

信長が清洲で尾張の盟主になり、その革新性により中央に進出し天下布武を行ったように、清洲桜醸造が紙パックの中にどのような革新性持った商品を展開するのか、今後が楽しみである。

最後に、公開されていない蔵を我々の頭記の関心事の解明(我が儘)の為に見学させていただき、恐らく通常は動かしていないブリックの充填工程を見学させていただく等の配慮をしていただいた清洲桜醸造(株)・K製造部長・担当の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。
自分たちの目で見た工場見学のお陰で、頭記の3つの疑問が解け、金賞受賞酒も紙パック鬼ころしも矛盾無く両立することが明快に理解出来たのである。
良い造りの本物の日本酒を安価に消費者に供給するという企業の理念とそれを可能にする正攻法の造り・感性・官能・技術がある事、金賞受賞酒も鬼ころしも同じように最新の設備と細心の思い入れで造られているが目に見えたのである。

 

記念写真

無事見学終了後、玄関前でお世話になったK杜氏(製造部長)(青服)さんと見学記念撮影。
日本酒に関する好奇心の顔・顔である。皆さんなかなか良い表情をしている。

 

戻る