さて、出品酒等の大吟醸は、機械による自動化とは全く異なり、手作業による伝統的な造を行っている。
限定吸水、蒸しは甑、仕込みはサーマルタンク、搾りは袋づりである。
1階の奥の吟醸コーナーでは、今年の出品酒の仕込みが行われていた。
梯子を登り中を覗くと、山田錦40%精米・18号酵母の醪が香り高い吟醸香を立ち上らせている。
当然なのだが、出品酒・大吟醸は鬼ころし等の自動化された造りとは別の工程で伝統的な手法で行われていた。
造の見学が終了した後、研究室で3種類の利き酒。
左から夢山水55%精米の吟醸酒、中は大吟醸楽園19BY、右は隠し吟醸 20BY。
新製品なのか、リキュールとスピリッツを利かせていただいた。
リキュールはグレープフルーツ。果汁の味がフレッシュで旨味が濃い。
スピリッツはレモンベースで、軽い飲み口の爽やかな味。
日本の酒税法では、「リキュール類」の定義は「酒類と糖類その他の物品(酒類を含む)を原料とした酒類でエキス分が2度以上のもの)」だそうで、2度未満はスピリッツ扱いになるとのことである。
蔵見学を終えて、関心事に対する答が見えてきたように思われる。
ただ添加アルコールを増やしただけでは、味のバランスが崩れてしまう、昔の三増酒になってしまう。技術・感性があって、味わいの厚さ・旨味・コク・後口の良さを維持しながらアルコール濃度を1度上げる事が出来る。
その味の差に消費者はお金を出すのである。
信長が清洲で尾張の盟主になり、その革新性により中央に進出し天下布武を行ったように、清洲桜醸造が紙パックの中にどのような革新性持った商品を展開するのか、今後が楽しみである。
最後に、公開されていない蔵を我々の頭記の関心事の解明(我が儘)の為に見学させていただき、恐らく通常は動かしていないブリックの充填工程を見学させていただく等の配慮をしていただいた清洲桜醸造(株)・K製造部長・担当の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。
自分たちの目で見た工場見学のお陰で、頭記の3つの疑問が解け、金賞受賞酒も紙パック鬼ころしも矛盾無く両立することが明快に理解出来たのである。
良い造りの本物の日本酒を安価に消費者に供給するという企業の理念とそれを可能にする正攻法の造り・感性・官能・技術がある事、金賞受賞酒も鬼ころしも同じように最新の設備と細心の思い入れで造られているが目に見えたのである。
無事見学終了後、玄関前でお世話になったK杜氏(製造部長)(青服)さんと見学記念撮影。
日本酒に関する好奇心の顔・顔である。皆さんなかなか良い表情をしている。
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