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2008/11/8 京都伏見の齊籐酒造主催の「第三回 英の刻(はなぶさのとき)」に参加しました。

 

京舞を楽しみ、英勲を楽しみ、料理を楽しんでる間に、齊籐酒造社長の挨拶、造りの責任者の藤本取締役製造部長の酒米祝の説明、菊水の料理の説明があり、社長ご夫妻が各テーブルを回られ出席者に酌をして接待をしておられた。非常に丁寧なもてなしであった。蔵の何ごとにも手を抜かない姿勢が感じられた。

最後に、抽選会があり、金賞受賞酒、他の銘酒、リキュールなどが沢山提供されて、いつの間にか終わりの時間が来てしまった。

宴が終わった後は、蔵の方達の見送りを受け1階に降り、庭を拝見した。

菊水のHPによれば、この庭園は、呉服商寺村助右衛門の別荘であった物で、小川治兵衛が作庭したものである。
茶室「唯庵」、「閑柳亭」があり、「唯庵」は明治以前の物。庭の石灯籠は、慶長九年の銘があり、豊臣秀吉の9回忌に大名が豊国神社奉納した物と伝えられているそうである。
(菊水HP http://www.kyoto-kikusui.com/

 

庭を拝見し、快い酔いを感じながら、入り口の石蕗に別れを告げて、門を出て紅葉が色づき始めている南禅寺方面に向かうと、丁度雨が止み、空が明るくなっていた。

「英の刻」の報告は此処で終わりです。
お急ぎでない方は次の感想にお進み下さい。

 

【感想】
「地産地消」をテーマにした齊籐酒造の企画に満たされて、帰りの新幹線の中で取り留めもなく、日本酒・料理・文化のことを考えていた。
日本の季節は素晴らしい、今は紅葉の季節である。京都は何処もが紅葉の名所である。
日本酒は季節があってこそである。

  1. 日本酒の位置
    日本酒の会に女性が参加することも多くなってきていることを感じるが、筆者の職場周辺には、日本酒を拘って飲む人は多くない。
    日本酒のイメージはあまり変わっていない。どうしても、飲み放題などで飲む日本酒を考えてしまうので、臭いが悪い、悪酔いするとかの評価が多い。自身の体験というより聞き覚えの先入観で考えているのだろう。

    日本酒の位置を変えるには、どうしたらよいか。
    蔵・酒販店・料理飲食店が努力することも勿論必要だし、現状では充分とは言えないが、消費者のレベルでも日本酒好きはもっと声を大きくして日本酒の素晴らしさを吹聴した方がよい。
    日本酒の会sake nagoyaなどはこの意味では、大きな役割を果たしている。
    幹事さんの手弁当で、全国の銘酒を「かのう」さんの綺麗な会場と酒に合わせた料理を楽しむことが出来る機会を毎月提供しているのである。
    楽しければ自ずから人は集まるのである。

  2. 日本酒と日本料理
    日本酒と日本料理とは切っても切れない関係なのだが、実際にはビール、ウイスキー、焼酎なども飲まれている。懐石料理に焼酎はまず無いだろうが、ウイスキーはありそうな気がする。
    日本料理の板長さんが日本酒まで自分の料理に合わせて自分の料理と日本酒をコーディネートする事はあるのだろうか。あるとしても限られる様な気がする。
    料理には長年の修行をするが、料理に欠かすことが出来ないお酒に付いての修行が足りないのではないだろうか。自分の料理に合わせてお客様に自分の見識・センスを示す日本酒を提案すべきだと思う。
    最近の日本酒は、吟醸酒、純米酒の他にもサイダーの様な物、赤ワインと間違えそうな物、御神酒の白酒の様な物、多種多様、色とりどりである。板長のセンスで料理に合わせて日本酒のお話をすれば料理にひと味幅が出来るはずである。

  3. 日本文化の中の日本酒
    日本文化の特質は季節感にある。習俗にしても、唄・踊り、文芸にしても季節感無くしては成り立ち得ない。特に俳句は季節感そのものである。
    日本料理にしても季節感に食すると言っても良い程、素材も取り合わせも飾りも季節を表現する。
    日本酒も当然に季節の中で考え、位置づけし、楽しむことが必要だ。日本酒にも季節感がある。新酒から冷やおろしまでの間に春・夏に合わせた日本酒も出来ている。花見酒には薄濁りの霞酒がよいだろう、夏はキリリと冷やした吟醸酒が良いだろうし、水割りでも良い、好きならば夏こそ燗も良いだろう。
    桜の頃は花見酒、夏は渓流の川床料理、秋は月見の宴、菊花の宴、芋煮会、冬は雪見酒。季節の移ろいと共に日本酒を楽しむ機会は多くある。
    旅行会社が企画して季節折々の日本酒と日本料理を楽しむ企画を提案すればよいと思う。
    蔵、酒販店、料理店もそれぞれ季節感を持った商いを行うことが日本酒を日本酒らしく位置づけることになる。
    消費者もセンスがあって面白そうな大人の企画があれば喜んで参加するだろう。岐阜の酒の中島屋さん主催の「季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」は既に220回を越えて続いている日本酒と季節の料理の会である。また、非定期だが名古屋の割烹安兵衛の日本酒と料理の集いも日本酒に見識のある店主のセンスを感じることが出来て楽しい会である。
    様々な日本文化の中の習俗、祭り、祝い事などに改めて日本酒を位置づけていけば、安定した需要が確保されるだろう。

  4. 日本酒と文芸と人の集い・結社
    日本料理と同じで、日本酒と文芸は切っても切れない関係がある。季節を詠むのが歌であり、俳句であり、詩であるとすれば、詠われる場に日本酒があるのは当然である。
    古来、その様な文芸の場で日本酒を楽しみ、詠い、人と人が楽しみを共有してきた筈である。今の日本人は、あまりにも余裕が無く心の自由さから離されてしまっている。
    茶会の後では日本酒を楽しむと言うが、句会、歌会、詩会など結社の人の集う場では、季節を読み、銘酒を楽しみ、人を知り人と共に悦びの時間を共有することが会を活性化させることにもなる。
    日本酒は晩酌の為の酒だけでは淋しい。人と飲んで楽しい物である。

<報告:Y>