縁があって10月に齊籐酒造の蔵見学に参加することが出来た。
この蔵に対する予備知識がなかったので見学に行き驚かされた。
全国新酒鑑評会の金賞を11年連続して受賞している蔵である。伏見の古来からの伝統的な造りに拘り、職人的な感覚を大切にした造りが行われているのだろうと勝手に想像していたのだが、自分の目で見れば違っていた。
蔵は近代的な鉄筋コンクリートの蔵であった。しかし、醸造設備は最新鋭の機械を各工程に配しながら、要所要所では手造りの工程を守っている。
伝統と近代化の両立が目の前にあった。現代を活動的に生きる蔵である事に驚かされた。
(蔵見学については、筆者のブログを参照。
http://nabanatei.com/blog-entry-6569.html)
蔵見学から帰り、齊籐酒造のHPを見て感心した。蔵の活発な情報発信がされており、蔵・銘酒の紹介のみに留まらず、蔵の最新情報・直営の飲み処・各種イベント・通信販売etcを見て、日本酒を取り巻く環境が昔よりも厳しい現代を活発に生きる齊籐酒造の姿がHPの中にも感じられた。
HPを見ていると、消費者向けの企画の掲載があった。
「第三回「英の刻」締め切り迫る。(10月31日まで)」と書いてある。
内容を見ると
『第三回英の刻(はなぶさのとき)
お待たせ致しました、第三回「英の刻」の開催が決定致しました。今回のテーマは「地産地消」で、京都のお酒・京都の料理・伝統・文化、そして京都の秋を五感で味わって頂きたく思います。南禅寺のもみじと、料亭「菊水」の彩り豊かな秋の味覚を集めた京懐石、芸舞妓による艶やかな京舞、そして京都酒米「祝」で醸した金賞受賞酒をお楽しみください。
日時:11月8日(土)11時45分~14時 受付開始11時30分
料金:お一人様12,000円(税込)
料理:菊水秋の京懐石
飲物:日本酒(平成20年金賞酒英勲大吟醸祝35)(醪音四割磨き)(古都千年)他
場所:京料理「菊水」 地下鉄東西線「蹴上」駅下車徒歩7分
イベント:宮川町の芸舞妓による京舞
...』
京の料亭で、金賞受賞酒と京懐石をいただきながら、「芸舞妓による京舞」を楽しむことが出来ると書いてある。
こんな企画があれば京都に行きたい、と常々思っていた内容である。
締め切り間際であったが、何とか間に合い参加できたのである。
会場の「京料理 菊水」は東山の南禅寺の隣に位置している。
京都は必ずしも交通の便が速くない。京都駅烏丸口から地下鉄に乗り、乗り換え蹴上で降り、南禅寺方面に歩く。
今日は生憎の雨だが、それでも観光客は多く、傘を差して南禅寺方面に向かっている。
雨の京都も悪くはない。
南禅寺に間もなく着く頃、大きな「菊水」の看板が目に入った。
看板の手前を少し登る径を右にはいると、別荘の様な建物が左に続き、右には産経新聞の南禅寺倶楽部があり、その奥に菊水は在った。
立派な門があり、京都の料亭の佇まいを感じる。
個人で利用出来るところではないなと、一寸複雑な感慨を感じながら、門を入るとすぐ、季節の花石蕗が出迎えてくれていた。
玄関を入ると、花が活けられている。
右側の菊水の受け付けの奥の階段を上がると、2階の宴会場が「英の刻」の会場であった。
会の受付を済ませると、グラスが渡されウエルカムドリンクをいただき、自分の番号の席に座ることになっている。
ウエルカムドリンクの英勲リキュールは3種類から選ぶことが出来る。別種類をお代わりすることも出来る。
グラスを持ち、襖を開けて一段高い座敷にはいると、畳の上に中段の座椅子が丸テーブルの周りに並べられていた
正面には金屏風の舞台がある。
既に多くの人が着座していた。
後ろの床の間には、掛け軸と生け花が飾られている。
定刻になり、開会の挨拶が始まる。
「英の刻」は3回目を迎え、今回のテーマは、「地産地消」である。
「京都のお酒・京都の料理・京都の伝統文化そして京都の秋を五感で味わって戴きたく。地産地消をテーマにしました。
南禅寺の紅葉と、料亭菊水の彩り豊かな秋の味覚を集めた京懐石、芸舞妓による艶やかな京舞、そして京都酒米「祝」で醸した金賞受賞酒をお楽しみ下さい。」
参加者は70名位であろうか、遠くは青森、東京から参加されている人もおられるとのことで、名古屋から参加で遠方と思ってはいけない事が判った。
なんと、アメリカはオレゴン州から来ていた、日本人の若い女性が居た。なんでも日本酒の良さをアメリカに紹介したいと話していた。
金賞受賞酒の大吟醸が各テーブルに配られ、杯に注いで乾杯である。
女性の司会者が、今日は、英勲の銘酒が沢山揃えられています、思う存分お好きなだけ召し上がり下さいと説明する。
暫くして、舞台が突然明るくなり、室内がざわめくと、艶やかな芸妓・舞妓さんの登場である。
宮川町の芸舞妓の登場である。
司会者が、名前を説明したが、席が舞台から遠く場内が騒がしいのでよく聞こえない。
芸妓-ふく尚舞子-美代治、冨久有唄-美恵子らしい。
司会者が、写真を撮る機会は後でありますので、京舞をまずお楽しみ下さいと案内する。
まずは、芸妓さんの舞である。
日本舞踊には縁のない筆者には何という踊りか解らないので紹介できないが、金賞受賞酒をいただきながら、踊りを楽しむことは日本人に生まれて良かったと思う。
次は、舞子さん二人の京舞である。
これは、筆者にも解った。「祇園小唄」である。
月はおぼろに東山
霞(かす)む夜毎(よごと)のかがり火に
夢もいざよう紅桜
しのぶ思いを振袖(ふりそで)に
祇園恋しやだらりの帯よ
夏は河原の夕涼み
白い襟(えり)あしぼんぼりに
かくす涙の口紅も
燃えて身をやく大文字(だいもんじ)
祇園恋しやだらりの帯よ
鴨(かも)の河原の水やせて
咽(むせ)ぶ瀬音(せおと)に鐘の声
枯れた柳に秋風が
泣くよ今宵(こよい)も夜もすがら
祇園恋しやだらりの帯よ
雪はしとしとまる窓に
つもる逢(お)うせの差向(さしむか)い
灯影(ほかげ)つめたく小夜(さよ)ふけて
もやい枕に川千鳥
祇園恋しやだらりの帯よ
(長田幹彦作詞・佐々紅華作曲)