9月8日土曜日の中日新聞の夕刊に、株式会社イズミックの主催のイベント「新たな提案、創造展示会」の広告が掲載された。
『9月10日(月)17:00~19:00 名古屋観光ホテル。入場料1,000円。』
と書いてある。
名観で1,000円? キワモノのイベントかと思ったが、よく見て驚いた。
清酒・焼酎・食品の3部門の展示会で、試飲もできると書いてあり、何と清酒の出品蔵は66蔵の一覧がある。有名な蔵も参加している。
耳にしたことのないイベントだが、66蔵の試飲が出来ると書かれているのを見ては、行かざるを得ない。
時間は厳しいが、仕事をやりくりして、なんとか、6時前には会場に着いた。
受付を済ませると、分厚い小冊子を渡される。見ると、展示会参加業者とその出品の一覧であり、清酒・焼酎・ワイン・食品の大総合展示会である。新聞では66蔵であったが、一覧表には、69蔵もある。1時間で回れるほど柔な内容ではない。
広い会場に会場にはいるとすでに大勢の人が、試飲をしている。会場の右側が日本酒、真ん中が焼酎・泡盛、左側が食品・清涼飲料水の配置になっている。
清酒に絞り、愛知・岐阜の蔵も多く参加しているが、知らない蔵を中心に試飲する事とした。
【試飲】
会場にはいるとき、ワイングラスを渡される。日本酒の場合、小型の利き猪口またはガラスのぐい呑みが渡される事が多い、今日はワインの試飲もあり、ワイングラスである。新鮮な気がする。
急いで回ったので、記憶に残った物のみ記載する。
- 佐渡銘醸 (新潟) 天領盃 大吟醸YK-35
甘苦系の大吟醸。評価7.5。
- 佐渡銘醸 (新潟) 四十年の歳月 本醸造
バランス良い。後口も良い。大吟醸より良い世界である。評価8.0。
- 末広酒造 (福島) 大吟醸 玄宰(げんさい)
スッキリとした大吟醸。甘苦系。柔らかい世界である。
- 大七酒造 (福島) 大七箕輪門 生酛純米大吟醸
バランスの取れた酸味がある味。苦味は底に抑えられている。後口良い。評価9.0。
- 大七酒造 (福島) 大七皆伝 生酛純米吟醸
バランス取れた味。酸が丸い。後口良し。評価8.5。
- 宮崎本店 (三重) 大吟醸 宮の雪
甘く広がりのある大吟醸。後口は苦味系。評価8.0。
- 寿喜娘 (福井) 大吟醸 寿喜娘(すきむすめ)
温度管理に問題があるのか、熟成方針か不明だが保存的風味を感じた。
- 山本本家 (京都) 純米大吟醸 松の翆
熟成方針なのだろう、落ち着いた純米酒的な風格、キレは無い。タンク貯蔵とのこと。
- 土佐鶴酒造 (高知) 純米大吟醸 土佐鶴 山田錦
落ち着いた酸味、味のバランスが取れているオーソドックスな大吟醸。評価9.0。
- 土佐鶴酒造 (高知) 辛口吟醸 大吉祥土佐鶴
酸が抑えられたスッキリした飲み口。評価8.0。
- 司牡丹酒造 (高知) 純米大吟醸 司牡丹
バランスは酸味系だが、広がりのある大吟醸の世界。底に苦味がある。評価8.5。
- 司牡丹酒造 (高知) 土佐牡丹酒 純米酒
酸味系の味。後口残り香に老香、化学臭を感じる。評価7.0。
- 八木酒造部 (愛媛) 大吟醸 山丹正宗 17BY
入口は甘く、広がりのあるバランスの取れた大吟醸の世界。後口も良い。
17BY瓶冷蔵とのこと。評価9.0。
- 八木酒造部 (愛媛) 山丹正宗 ひやおろし純米酒
酸味系の味。後口にピリ味が残る。燗向きの酒か。評価7.0。
- 川鶴酒造 (香川) 純米大吟醸 大寒生粋仕込 天竺木綿袋しぼり
生粋はシングルタンク、天竺はインドのこと。
甘い入口の大吟醸。後口にピリ味あり。評価8.0。
- 日新酒類 (徳島) 大吟醸 瓢太閤
甘い入口の大吟醸の世界。苦味はあるが底に抑えられているために味を締めている。
評価9.0。
- 福美人酒造 (広島) 純米大吟醸 福美人
甘苦系の厚みのある味の大吟醸。評価8.0。
- 李白酒造 (島根) 李白 斗瓶囲い大吟醸 山田錦
香りよく、柔らかい大吟醸の世界、味のバランスも良い。
後口に微かにピリ辛あり。評価8.5。
- 美少年酒造 (熊本) 美少年 火炙 純米酒
酸味系の味。残り香に老香、化学臭を微かに感じる。評価7.0。
- 山崎合資会社 (愛知) 尊皇 純米吟醸原酒
厚めの味、後口にピリ味が残る。
- 山崎合資会社 (愛知) 尊皇 辛口純米 活鱗(かつりん)
この秋から新発売の新しい銘柄だそうである。先行試飲である。
冷や:酸味が中心の落ち着いた味である。
燗:酸が丸くなる。食中酒としての味わい。
- 清水醸造 (三重) 鈴鹿川 純米吟醸中取り
入口は甘く、ゆったりとした酸の味が続く。評価8.0。
- 清水醸造 (三重) 鈴鹿川 純米原酒 ひやおろし
落ち着いた純米酒の世界。保存温度によっては老香が出るかも知れない。評価7.5。
あっと言う間に終了の午後7時になり、終了は時間厳守である。心残りであるが会場を出ることにした。
急いできて、急いで回ったので、カメラを持ってきていたことを忘れていた事を思い出した。そんな訳で写真なしの報告である。
【感想】
- 試飲もさることながら、一番印象的であったことは、飲料・食品の総合卸業者の活気・パワーを感じることの出来た、面白い経験であった。
- 帰り際に、ずらりと並んだ背広姿のIzmicの社員の一人に質問してみた。
その結果
- この企画は、元々酒販店・食品店の小売りのための展示会であり、毎年この時期に開催している。
- 今年は、午後1時から5時までを従来の展示会とし、5時からを一般消費者に開放したもの。
- 一般の消費者の反応も良かったので、来年も一般に公開したい。
- IzmicのWEBは、イズミックワールドで検索すれば解る。
元々、流通業界内の展示会であるので、一般消費者には閉じられた世界である。卸業者は消費者には見えない存在なので、実態が解らないが、このような場所に足を運ぶと卸業者の力を感じる。
小売りが束になってしかできないことを或いは束になっても出来ないことを軽々と出来る実力を感じる。
その気になれば、色々なことが出来そうである。是非、一般消費者のリサーチを行って、製造・流通に関する要望を蔵と共に取り入れて欲しいと思う。
- 日本酒だけでも参加蔵の三分の一しか回っていないだろう。焼酎・泡盛・ワイン・食品すべて回るには最低5回参加する必要がある。時間を長くするとか、開催日を土・日にすることが出来ればと思う。
- 試飲については、四国の酒のレベルの高さを感じた。大吟醸はそれぞれ美味かった。加えて、値段が1升5,000円前後である。流石、酒飲みの土地柄である。消費者の品質・価格に対する要求が厳しいのだろう。
- 有名蔵では大七が印象的であった。スッキリした綺麗な世界であるが同時に味の厚みを感じる。カタログを見ると試飲酒より格上の酒がいくつかある。研究すべき蔵と思った。
- ワイングラスの利き酒。
香りが掴みやすく、利き酒がし易い気がした。料理を前にしての試飲は料理の匂いの干渉を受けることが多い。ワイングラスを使用すれば干渉を防げそうに思えた。
(報告:Y)