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2007年3月23日(土)「作」の清水醸造に行ってきました。

清水醸造株式会社(三重県鈴鹿市若松東3-9-33)
https://seizaburo.jp/

 

清水醸造は、「作」を醸している蔵である。昨年末以来、注目している蔵である。
三重県は酒処であり蔵の数も多く、「而今」、「るみ子の酒」など人気ブランドもあるが、飲んでみれば、「作」はトップレベルの酒であることは理解できる事である。
筆者も参加した、三重県新酒鑑評会一般公開においても、吟醸酒から普通酒まで安定した酒質を感じさせた。その筈である、三重県新酒鑑評会で3年連続首位賞、2年連続全出品酒入賞の快挙を果たしている。水準の高さは,事実が証明している。

高速道路を降り、国道1号線で南下する。四日市の空は曇っており、化学工場が道路の両側に続いている、煙突の数も多く、重苦しい風景である。この風景に日本酒の醸造は似合わない。
鈴鹿市に入ると、風景が一変した。田園地帯になり、空も明るくなったような気がする。行政地域により土地の使用目的が異なっていることが体感できる。これならば日本酒は醸造できるだろう。
国道23号線を左に折れ、畑の中を走り、昔からの集落にはいる。狭い道を辿っていくと、清水醸造は、海の近くに所在していた。

入り口の右側が事務所になっており、ご挨拶をする。清水社長、内山杜氏共ご不在である。清水社長は急用が出来たため出張されたとのこと、残念だがやむをえない。内山杜氏は山形へ出張中であることは予めお聞きしていたし、三重県の鑑評会で名刺もいただいている。見学の案内は、製品部の岸田氏が引き継いでいただいているとのことで安心した。

蔵の見学は、製造工程に従って、案内・説明をしていただいた。現在の仕込みは、平成に建築された新しい蔵で行われている。奥にある木造の古い蔵は、イベントの会場、展示室、倉庫として使用されている。

清水醸造の見学の結果を、分かり易く箇条書きにしてみた。

  1. 造り
    1. 酒米:山田錦、美山錦、右近錦を中心に使用。
    2. 仕込み水:海に近い場所なので、水はどうなのか関心があったが、井戸水ではなく、鈴鹿川の伏流水を導水しているとのことである。静岡の磯自慢酒造も焼津の海に近い立地条件で、 地下水ではなく、藤枝の方から導水していると説明を受けたが、清水醸造も全く同じである。
    3. 造り:積極的に機械を導入して、省力化と品質の維持の双方を実現している。機械化の一方、上級酒については、手作業の造りも行っている。洗米・蒸し米も機械を使用し自動化しながら、 上級酒は手洗い、甑の使用と使い分けている。造りの工程が、複線になっているのである。小仕込みにして機械化と手作業の両立が考えられ、巧みである。

      (自動洗米機) (自動蒸し機) (手作業甑) (放熱機) (自動切り替えし機)

      搾りについては、大型のヤブタもあるが、小型の機械(機能はヤブタとおなじ)を使用している。小型の方が、清掃の面で有利と素人考えでも判断できる。

      (搾り機) 

    4. 温度管理:酒質の維持に重要な、温度管理には機械化が積極的に行われている。タンクはすべて温度制御されている。

      (温度制御されたタンク) 

    5. 濾過:濾過は行うが、炭の使用は最小限にしているとのことである。

      (濾過器) 

    6. ブレンド:どの酒も安定した、綺麗な滑らかさを持っており、銘柄毎のイメージに合わせたブレンドが出来る感性の存在が感じられる。

  2. 経営戦略
    この段は、清水社長にお話を聞けていないので、筆者の推論であることを予め、お断りしておく。

    清水醸造の経営戦略は、酒蔵が持つ伝統的・保守的・守旧的な体質に止まるものではなく、積極果敢なチャレンジ精神に満ちた、消費者指向の柔軟なものである。 その視線は、地元三重県と全国と両方に向けられている。
    1. ブランド戦略 清水醸造は、大きく分類すると3つのブランドを持っており、ブランド毎に商品イメージ・販売チャネル・販路を分けている。
      • 「鈴鹿川」:大吟醸から本醸造まで、鈴鹿川でカバーする。県内を商圏としたブランド。
      • 「喜代娘」:大黒屋光太夫 酔夢譚(すいむたん)、笙(しょう) 鼓(こ) 絃(げん) 箏(こと)
        大黒屋の屋号に由来する伝統的な地域性を持ったイメージ
      • 「作」:全国を商圏としたこだわりの銘柄イメージ。販売チャネルも専用の酒販店が担当。
        吟醸酒系-香乃智・悦乃智
        純米酒系-穂乃智・雅乃智
        特別本醸造系-和乃智

       

    2. 地域への文化発信
      地域に対し、酒の供給だけに止まらず、各種イベントを開催し、文化的なプレゼンスを持った活動をしている。
      • 旧酒蔵を利用した酒と料理のコラボレーション。

        旧酒蔵のイベント会場

        田植えから仕込み上槽までの全工程の体験コースの実施。

        2006年の田植え 上槽
        (清水醸造HPより転載させていただきました。)

        この企画は、今年も行われます。

    3. 消費者指向
      日本酒の容器は、通常の場合、1升瓶、4号瓶で行われるが、清水醸造は240mlというサイズで多くの銘柄を供給している。 ワンカップ形状ではなく、しゃれた小瓶である。
      「作」を一通り味わいたいという場合、便利である。ネットでプレミア付で販売されている事を知りながら、 何の手だても行わない蔵は見習って欲しいものである。
      消費者が便利なことを行うことが、消費者指向の経営である。

      清水醸造は、蔵の中は、若い社員が情熱を持って新しい酒造りに挑戦して、技術的な水準を高め、鑑評会でその結果を出している。 杜氏の内山氏は若い杜氏さんであり、ご案内いただいた岸田氏も若い方で頑張っておられる様子が言葉に表れていた。
      一方、蔵の外は、清水社長が積極的に社会と交信し、蔵のプレゼンスを高めている。消費者指向の経営を行っている。清水社長は、三重県酒造組合の副会長でもあるらしい。
      内外のバランスの取れた、今後の活躍が予想される蔵である事が見えた蔵見学であった。

      蔵での即売はしていないという事なので、教えていただいた、近くの酒販店太田屋さんで「作」の購入をすることとした。
      車で5分ほどの近さのお店には、流石に地元である、清水醸造の全製品が取り扱われている。これは便利である。銘柄毎に販売チャネルが異なっているので、1箇所で揃うのは有難い。240mlの「作」を買い揃えてみた。

      太田屋(三重県鈴鹿市南堀江2-23-28)

      https://ootaya-sake.com/

 

蛇足である話。
時刻は昼を過ぎていたので、近くで見かけた穴子専門店「魚長」で昼食を取ることとした。

 

あなご天丼(1,365円)は、巨大なあなご天が、2本乗っており、器からはみ出している。
豪快な丼である。「作」を開けて天麩羅に合わせてみたかったが、いかんせん、車の運転手である。残念だが、仕方ない。

(報告 Y)