三重県酒造組合が主催している新酒の新酒品評会が開催された。三重県の酒を網羅的に勉強できる良い機会なので参加した。
JR名古屋経由で津に向かう列車は、卒業式の季節である。そこここに、矢絣の着物と袴、和服と袴の卒業生達が華やかな声で話し合っている。風は強いが春の陽も一際強い陽になった。
会場のホテルは、JR津駅に隣接している。開会時間までまだ2時間ほどある。駅の周辺を散策することにする。津は通過したことはあるが、歩いたことはない。
護国神社には献納された酒樽が並べられている。
津藩主の別荘があった津偕楽公園は桜の開花を待ちかねて、茶屋が所狭しと競い合っている。もう間もなく、花見の客が公園内に充ちることになるのだろう。それにしても、陽ざしは春だが、風は厳しい冬の風である。
ホテルに戻り、6階に上がると、受付があり、会場の大宴会場では一般に先立って、関係者向けの利き酒会が行われているようである。背広にネクタイ姿の人達が多く、蔵開放とは違った、公的な雰囲気である。
受付を済ませ、出品酒の資料と利き酒用のプラスチックの利き猪口を受け取り、待合いコーナーの椅子に座り、参加蔵、出品酒の確認をする。
【出品蔵と出品酒】
平成19年3月1日現在、三重の酒造場は48場
出品酒は6部門に分かれている。
待ちわびた一般公開の時間になり、会場である大宴会場に入る。
入口から奥に向かって、テーブルが3列並んでおり、左から、吟醸酒の部、純米吟醸の部、純米酒の部、本醸造の部、普通酒の部、新商品の部に区分され、奥に向かって区分毎に出品酒が並べられている。
首位賞の出品酒には、誇らかに紅白のリボンが付けられている。受賞酒には金のラベルが貼られている。
利き酒は、出品酒の前に置かれた蛇の目の磁器の利き猪口を使うか、出品酒にセットされているスポイトを使い、渡されたプラスチックの利き猪口を使うか、どちらでも良い。
【利き酒】
吟醸酒の部から利き酒を始めることにしたが、139品目の出品酒を2時間半で終了するのは、困難と思われたので、受賞酒を中心に利くことにした。
時間終了まで、極力多くの出品酒を利かせていただくことにした結果、次の通りとなった。
吟醸酒の部 42品目中 27品目
純米吟醸の部 22品目中 13品目
純米酒の部 25品目中 15品目
本醸造の部 23品目中 10品目
普通酒の部 24品目中 3品目
新商品の部 3品目中 1品目
合計 139品目中 69品目
品数が多く、個別の評価は煩瑣なので、印象的なところだけ報告するが、あくまで筆者の私見である。
No.28 半蔵(大田酒造) 軽く、広がりのある吟醸酒の世界、酸が薄めで物足りないが上品である。
No.34 高砂(木屋正酒造) 目下注目の「而今」の蔵の出品酒で、今回期待していた蔵の出品酒であったが、資料によると入賞しておらず、硬い感じの入口で、広がりが無く、味がすぐ終わり、後口は軽い甘苦である。期待が大きかっただけに、残念な気がした。
No.35と36 天下錦(福持酒造場) 吟香有り、広がりのある吟醸酒らしい世界でありながら、味のある酸の厚みもあり好印象であった。
No.6 入魂宮の雪(宮崎本店) 軽い入口、広がり有り、酸も軽い、上品さ有り。
No.19 天下錦(福持酒造場) 吟香あり、吟醸酒らしい世界、甘く、広がる、後口の癖が無くスッキリしている。
No.1 青雲(後藤酒造場) 甘く、酸味のある、嫌味のない世界、後口も良い。吟醸酒のような感じの純米酒。
No.6 三重の寒梅(丸彦酒造) 酸の厚みのある味、純米酒らしい世界。
No.8 鈴鹿川(清水醸造) 程よく調整された甘く丸い薄い酸味の癖を感じさせない純米酒。後口も良い。
No.15 酒屋八兵衛(元坂酒造) 甘く薄い酸、軽い世界で、吟醸酒の風格。
No.23 参宮(澤佐酒造) 甘く酸味のある一方、吟醸酒の風格のある世界。
No.9 鈴鹿川(清水醸造) 甘く、軽くスッキリとした世界。後口は軽いピリ味。
No.19 俳聖芭蕉(橋本酒造場) 甘い入口、軽い世界、吟醸酒の風格、後口も良い。
No.21 天下錦(福持酒造場) 甘くスッキリとした味、添加アルコールの味が僅かにするが気にならない。後口のピリ味もなく、キレよい。
No.23 新商品の部 参宮(澤佐酒造) 酸味のある丸い世界。麹の味のする新酒らしい味わい、嫌味のない味である。純米酒の風格である。
【感想】
(内山智宏杜氏)
(報告 Y)