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2007.2.18 「第202回季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」に行きました。

 

昨日の雨が嘘のような、春の日となった。
岐阜駅前の化粧直しと新ビルの建築は着々と進行し、新しい駅前に変貌するのも、そう遠い日のことではないだろう。

春の様な風に吹かれ、春のように暖かい陽ざしの中を気持ち良く歩いていると「ざっぶん」の前を通り過ぎてしまった。いつも定刻近くに到着するので、今日は早く出た甲斐があり30分近く前に着いた。

受付を済ませると、今日は新しい趣向でブラインド評価があるとの説明を受ける。左のカウンターに新聞にくるまれた1升瓶が3本(A,B,C)並んでいる。
銘柄当てとか、マッチングではなく、利いた印象を紙に書いて提出する評価である。

席はまだ空席が多く、自由に選択が可能なので、入口から2番目の4人がけのテーブルに座り、Aの印象を書いていると日本酒の会のA氏が到着する。前の席を勧める。Bの印象を記入していると、同じゼミ生であったN氏が入ってくる。前回は事情により欠席したが、年が改まり復帰したようである。
Cの印象を書いていると、帯をきりりと締めた和服の女性が受付を済ませ近づいて来るのが目に入った。そして、一つ空いていた筆者の右隣に着席した。
今回は季節柄、蔵の参加者が少ない。三千盛さんの営業担当の方のみである。若干寂しいが仕込みの最盛期である以上やむを得ない。

評価を書き終える頃にいよいよ会が開始となった。いよいよマラソン宴会の始まりである。「利き酒メモ」を見るとブラインドの3銘柄を含めて13銘柄の銘酒が紹介されている。...

12時30分に着席し、店を出たのが19時過ぎ、6時間半以上が一瞬のうちに過ぎた。いつも不思議である。楽しい時間は過ぎ去るのが早い。
この会の楽しみは、酒、料理、会話、雰囲気である。これらが渾然一体となり、錯綜して進んでいく中、時の経つのを忘れてしまうのである。
絡まった糸をほぐし、整理して報告してみよう。今回は酒は後にして雰囲気から。

【雰囲気】
雰囲気の柱は、会場である「ざっぶん」に因っている。
毎月開催される「季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」の中、年4回は「ざっぶん」の特別な会である。1時から始まり、7時過ぎまで続く宴会を気持ちよく接待してしていただくのは、37歳より若く見える、ハンチング帽を深くかぶった板長さんの心意気である。
「利き酒メモ」に、主催者の酒の中島屋西川店主が書いている。
「日曜の昼間の日本酒会はいつも楽しい。これも、ご商売ぬきで引き受けてくださっている和食彩「ざっぶん」さんの板長美浪様をはじめスタッフの皆様方のお陰、感謝感謝!!」と。
宴会の最中、前の通りを歩く通行人が、何をやっているのだろうと、のぞき込んでいるのは、ざっぶんの会が発するオーラを感じるのであろう。
この会場無くしては成り立たない宴である。

【料理】
季節を感じる心のこもった料理が提供される。
夏は鮎の食べ比べ、秋は牡蛎の食べ比べ、今回は蟹である。

  1. 前菜
    • う巻き
    • モッツアレラチーズのトマト挟み
    • タコス
    利き酒の評価をメモしていると隣の和服美人が銘々皿に取り分けてくれる。
    メモしている状況ではないのだが、感謝しつつ、メモはしなければならない。
  2. 河豚の唐揚げ
    かなり大きいものが皿山盛りででる。一人当たり五、六個になる。
    美味しくてほおばっていると、次々に酒が回ってくるので忙しい。
  3. 野菜サラダ
    内容が毎回変わる。前回だったか玉葱スライスのおかか掛けは山盛りのものがすぐに無くなった。今回も同じく、すぐ無くなった。
  4. ズワイガニの蟹シャブ
    指先で摘めるように、蟹の脚の根元部分の殻を、前処理して残してある。
    摘む部分の殻から下は、中味だけにしてある。
    殻を摘んで、土鍋の中を、数回揺らす、表面が白くなれば、それでよい。
    板長さんは生では厳しいと仰有ったが、殆ど生の状態でも美味しい蟹脚であった。これも一人五、六本以上の量がある。
    お隣さんが袖を片手で捌きながら、蟹を揺らす姿は粋なものである。
    やはり、日本酒に和服はよく似合う。
    和服美人さんは、健啖家で、食べられないものは何も無いと豪語される。
    筆者も何でも美味しくいただく質だが、それ以上かも知れない。
    兎に角、ものは美味しくいただくのが一番である。
    美味しさは食べっぷりに表れる。
  5. ズワイガニの蟹すき
    蟹シャブが終わると、蟹すきである。野菜、茸、豆腐、葛が山のように皿に盛られている。とても4人前とは思えない量である。
    蟹は脚の片側が削いであり、専用の金棒で身を取り出して食べる。
    野菜などは、ポン酢のタレでいただく。和服美人さんが蟹の脚は、そのままが美味しい、タレは付けない方が良いとアドバイスしてくれる。全くその通り、そのままの方が美味しい。野菜、茸、蟹の味が調和して、良い味を出している。
  6. ズワイガニの雑炊
    鍋物のつゆは極上のスープ、調味料である。旨さが凝縮した贅沢な雑炊になった。
  7. デコレーションケーキ
    今日の誕生日祝いは、「ざっぶん開店7周年」である。
    移り変わりの激しい飲食店で長く営業を続けることは意外に難しい。
    長く続くようにお祝いである。
    コアなお客は必要だが、他のお客を連れてくるコアでなければならない。
  8. 梅のぜりー
    板長さんのお母さんが造った梅酒の梅を使った、オール自家製のゼリーである。
  9. じゃがいもドーナッツ
    この会は意外なものが出てくる。
    これが日本酒にも合うから面白い。
    くどい甘さの脂っこいものではなく、さっぱりしたサクサクとした口触りである。
    カリッと揚がった皮の部分が特に香ばしくて美味しい。アーモンドかと思ったら、胡麻のようである。何でもTV愛知の「遊びに行こっ!」で最近取り上げられたらしい。宴の途中、中島屋さんの奥さんがわざわざ買いに行かれた。

【酒】

  1. <ブラインド評価3銘柄>
    1. 軽い入り口で、バランスのとれた味で、厚みもある。次第に辛口になる。後口は苦味系である。樽の香りかアルコールの香りか、後口の前に仄かに香りがする。
    2. 香りはない。厚みのある辛口の酒、味はバランスがとれている。食中酒として良い。
    3. 香りはあまり無い。味はバランス良い。〆張鶴より厚みは薄いが、広がりがある。後口は苦味はない。
    筆者の評価序列ではB、C、Aの順であったが、A,B,Cいずれも味が偏らずバランスがよい、辛口で、食中酒として晩酌に最適の酒である。 敢えて言えば、Aは押しが強いのでステーキとかイタリア料理とかこってりした料理、Cは広がりがあり、上品なので刺身等の日本料理、Bはスッキリと柔らかく辛口なのでどちらの料理でも合うのではと感じた。
    後で配布された資料でA→〆張鶴 雪 特別本醸造 B→清泉 特別本醸造 C→芳水 特別純米であった。
    後で価格を調べると(多少違っている可能性あり)2200円、3080円、2730円。
    価格を考慮すると、久須美酒造(新潟)の清泉がオススメである。
  2. <新酒の味わい>
    1. 七本鎗 純米吟醸 おり酒
      軽く、酸味のスッキリとしたにごり酒。
    2. 三千盛 吟醸 しぼりたて
      香り無い。味のバランスはとれた、スッキリとした酒仄かな麹味有り、残味は軽い苦味。
    3. 梅乃宿 生モト 特別純米無濾過原酒
      麹の香りのする酸味のある新酒らしい風格。
    4. 田酒 山廃仕込み 特別純米
      香りは無いが、厚みのある透明感のある味、バランスはとれている。後口もスッキリして、苦味、ピリ感無く、キレがよい。熱燗では少し辛味が増す。小左衛門山廃に比し、味に厚みがある。
  3. <大吟醸飲み比べ>
    1. 東一 大吟醸 新酒本生
      香りよい。口に含むとシュワっとした発泡感と麹の味を感じる。
      しぼりたて新酒の姿の大吟醸。
    2. 南部美人 初ばしり 大吟醸本生
      吟醸香あり。甘く広がりのある入り口、新酒らしい麹の味もある。
      残味は辛口、微かな苦味。
    3. 芳水 純米大吟醸
      米の旨みのある純米大吟醸。味のバランス良い。麹の味有り、新酒らしい。
    4. 芳水 純米大吟醸 平成15年12月瓶詰
      入口は甘く、バランスのとれた厚みのある味。落ち着いた熟成の良さを感じる。
      残味は仄かな苦味。
  4. <熟・醇を飲む>
    1. 天狗舞 石蔵 山廃純米吟醸本生 平成17年1月瓶詰
      香ばしい香り。旨みのある味。
    2. 松の司 陶酔 大吟醸 平成16年6月瓶詰
      香ばしい香り。熟成の旨み有り。天狗舞と同じ。
  5. K、L、Mの熟成酒はいずれもバランスが良く、味に厚みがあり美味しいものであった。熟成酒がこの会の楽しみである。

【会話】

紙数の都合で詳細は割愛するが、同好の士、蔵の方との会話がこの会の楽しみである。
中島屋西川店主には、この会の始まり、飛騨美濃酒蔵の集い、蔵元と特約店の関係等に付きお話しいただいた。
三千盛さんの情報: 3月25日の蔵開放では特約店でも手に入らない○尾の限定品がでる。30本位らしい。

時計を見ると19時をまわっている。予定を1時間もオーバーしている。酒もまだある。西川店主には映画・文学、N氏にはワイン、A氏には光通信のベスト・エフォート、和服美人さんには皇室問題の真実についてお話をお聞きしたいが、 もう時間である。満れば欠ける、欠けているのが花であるのが世の習い。是が次回への導きの糸というものだろう。意を決して立ち上がり、帰ることにする。
別れの挨拶をし、再会を約して、外に出る。
通りで、じゃがいもドーナツをおみやげにするためタクシーを探す。なかなか捕まらない、諦めて駅へ向かう、駅まで歩くとタクシーが見つかる。
教えて貰った店にタクシーを走らせる。
「ぱたーた」
〒500-8182 岐阜市美殿町45 Tel.Fax 058-266-5006
じゃがいもドーナツ 1個 100円

初春の宴は終わりを迎えた。家に着くのは2時間後。明日は仕事である。

【感想】

  1. 「季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」は今回で第202回。
    最初は6人の参加者であったとのこと。始めるのも、終えるのも簡単だが、続けることは難しい。守成は創業より難しい。西川店主は自分はしつこいと話された。
    成功する方法は、成功するまで諦めないこと、やり続けることであるとよく言われるが、しつこいという意味はそのようなことなのであろう。
  2. 分身の術
    書いてきたように、この会は6時間でも時間が足りない。酒も、料理も、会話も、メモも、写真も、一度にやりたい状態になる。心は5つ、身は1つ。とうとう、写真は1枚もとれなかった。蟹の写真だけは撮るべきであった。
    筆者が社会に出て間もない頃、毎日の仕事に忙殺され、時間的に篭の鳥状態であった頃、孫悟空に憧れたものだった。金斗雲、如意棒も欲しかったが分身の術が一番欲しかった。髪の毛を抜いて息を吹きかけると、自分の分身が現れるというあれである。久しぶりに分身の術が欲しくなった。5本の毛に息を吹きかければ良いのだから
  3. (特別)本醸造
    本醸造ランクの酒は面白い。吟醸酒は、名前の通り吟醸の造りのみであろう。
    本醸造は自由である。甘く、香りの高い吟醸系の造りのもの、思い浮かぶのは、十四代本丸、楯野川清流、夜明け前辰の吟といったところ、が在る一方、今日出た2銘柄は食中酒志向のバランスのとれた辛口である。三千盛、神の井の18カラットもこのタイプだろう。いろいろ研究の余地のある分野のような気がする。
  4. 春宵一刻値千金

    帯しめて春や霞を飲む宴

    蟹揺らす瞳の輝き詩本草

(報告 Y)