<2日目>
ここ3年で最も静かな宴会の夜が明けると三方五湖の久々子湖は窓の外に明るく見えている。
眠り続ける人、起きて朝風呂で昨夜の宴会の残滓を洗い流す人、それぞれである。
風呂は、温泉ではないと思われるがタイル張りの広い浴室に大小の浴槽、右端のガラス戸を開けて外にでると、露天風呂がある。露天風呂は少し熱めのお湯になっている、湯船から立ち上がると目の前には湖の水面が遠くまで開けている。風呂で汗を流して、遠くを見ていると良い気分である。
朝食は、昨夜と同じ宴会場である。
食卓の上には、小さい器に様々な料理が入っており、綺麗に並べられている。食べる前に目で楽しむことが出来る色合いである。
食材は高価なものではないが、気持ちを感じる演出である。真ん中の瓢箪型の皿が面白い。瓢箪の上部が上に持ち上がっている。その上に小鉢が並べられている。これを、松花堂弁当のように一つの皿なり盆に盛ったら面白さは無くなってしまう。
温泉玉子。漬け物(梅干し、切り干し、青じそ)。昆布の佃煮、蛤の甘露煮、人参牛蒡のきんぴら、高野豆腐、蒲鉾、ひじきとこんにゃくの煮物。大豆と昆布の煮物。あぶらげと大根の葉のお浸し。味付け焼わかめ。フルーツ(オレンジ、パイナップル)とサラダ。
席に着いてから、アジの一夜干しと味噌汁が運ばれてきた。冷めては美味しくないものは後から出すのも料理の技の内である。
2日目の昼食に備えて、朝食をたべすぎない様にとの出発前のお触れが出ていたが、実際朝食が始まってみると、御飯をお代わりする人が続出した。
勿論、ここの朝食が美味しい事は確かだが、もう一つ理由がある。それは「へしこ」である。
昨晩の部屋酒の肴に幹事さんが近くの魚屋さんで火を借りて焼いた鯖のへしこと容器を借りて味醂漬けにした鯖のへしこの所為である。鯖のへしこは酒の肴だけでなく、熱い御飯のお伴としても最高なのである。
朝食が終わると間もなく出発である。
ジャンボクラブ三方五湖を後にして向かったところは、近くの港の魚河岸の前の魚屋さんである。昨日借りたへしこの味醂漬けの容器を返す為である。
9時開店の寺川商店はまだ殆ど商品も並べられていなかったが、次々にトロ箱が並べられていく。
河豚、鯛、鯖、烏賊、甘エビetc
鯖の目はガラス珠のように丸く透明で青く光っており、何か恐ろしい程の新鮮さを放射している。
下が今朝の食卓の華であった鯖のへしこ。上のやや白い方が鯖のへしこに吟醸酒粕を塗ったもの。美味しいそうである。
それぞれ、へしこ、一夜干しなどを買った我々は早瀬浦を後にして一路、今日の目的である七本槍の蔵がある滋賀県の木之本町に向かった。
ところが着いたところは
敦賀の市街地にある「日本海さかな街」である。
なにぶん日本酒の会のメンバーは日本酒好きなのだが、魚も大好きなのである。
釣りから料理して、食べるまで好きなのだから、「日本魚の会 sakana nagoya」と言っても間違いではない。
「日本海さかな街」は焼津の魚センターみたいな、巨大な魚屋の市場である。
中にはいると、夥しい魚屋か種々の鮮魚から加工品まで売っている。
季節柄紅ズワイがどの店にも山のように並べられている。
近づいて視線を向けると、呼び込みと声掛けが直ぐ来るので落ち着いて魚を見られない雰囲気である。
ここでも買い物である。
甘鯛の開き、1枚500円の値札が付いている。手前に3枚並べられた値札の無い笊がある。
近づくと3枚1000円でいいよ、お兄さんと声が掛かる。買ってしまうことになる商売上手。
「日本海さかな街」を出て、着いたところは敦賀駅前の「矢部魚問屋」である。ここは一つの店舗で、中では扇風機を回して一夜干しを店内で作っていた。
流石にここでは、もう買い物をする人はいないようだった。
敦賀の街を出て、高速道路に乗ると今度は木之本である。
道路の横の山の雑木林には雪が残っている。初春の風情を感じさせる風景が窓の外を流れている。
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