top>体験報告>2007/10/21

 

2007.10.21(日)ごとう屋さんの勉強会に参加しました。

日本酒の会定例会のような試飲会に参加したことはあるが、このような勉強会への参加は初めてのこと。事前に伺っていた参加者は、飲食店さんとごとう屋さんの従業員及びそのOB。お酒にかかわるプロの集まりである。それぞれのお酒が、特に自分の持ち込んだお酒がどのように評価されるのか関心のあるところだ。そんな期待を持ち、日曜日の午前中、本会の2名とともに会場のごとう屋さんに出かけた。

「ごとう屋さん 今日は休業日です」

午前の会というのは大変よい。私見だが、味覚は、午後・夜より午前中の方がよい。
参加者は、主催者を含め10人ほど。初心者の我々のため、早速、ごとう店長さんからきき酒についてご説明をいただいた。

<店長さんの説明>
全般的な事項

  • きき酒は好き嫌いの評価ではない。客観性がある評価をする必要がある。
  • 良し悪しを判断していくためには、お酒に対する自分自身の審美眼を持つ必要がある。しかし、それを一人で身に付けることは難しい。人の意見を聞き教えてもらうことが必要になる。また、客観的に判断していくためは、技術が必要になる。

先ず最初に

  • きき猪口(直径8〜9センチの大ぶりのもの)にお酒を注ぐときは3〜4割までとしてほしい。上の空いている場所は、上たち香をかぐためのスペース。上まで入れてはいけない。
  • お酒の温度は室温と同じ18〜20度程度。

飲む前

  • きき猪口の蛇の目部分を見る。透明感、さえ、白ボケなどがないか確認する。
  • 上立ち香確認する。

口に含んだあと

  • 口当たり、味、含み香確認(上立ち香と異なるものがあるので注意)
  • 特に口の中での味の変化に注意
  • 通常は、100〜200種ぐらいきくのでここで吐くが、飲みこめばさらに味の変化が感じられ、後味やあとから鼻に戻ってくる戻り香を確認できる。

評価の上の注意点

  • 評価で注意するのは、前半と後半の味の変化。前半の味で、判断しがちだが、この部分はごまかしやすい。後半でそのお酒の本質がわかる。
  • お酒の将来も評価する必要がある。例えば、渋みは熟成されてまろやかになる。そのようなよい渋みやよい酸味があるか見極める必要がある。例えば、丁寧な造りの小左衛門さんのお酒は、3年ぐらいたつときれいになる。このような将来性も評価しなければいけない。
  • 熟度については、1は若い、2は飲みごろ、3はいきすぎで評価する。
  • 色、立ち香、口当たり、含み香、口の中での変化、(吐き)戻り香、残った味などの観点を評価する。代表的な点数の付け方は、4点法。1は優、2は良、3は可、4は酒でないという区分。上原先生は、戯言で、1は買いたいおさけ、2はおごってくれたら飲むお酒、3は金をもらえるのなら飲むお酒、4は金をもらってもいらないお酒と言っていた。

きき酒会の特徴・その他

  • きき酒ではどうしても目立つお酒のあとはわかりにくくなるし、しぶいもの、弱いもの、地味なものは評価されにくい。反対に力があり、押し出しのあるものは評価されやすい。明確な表現力やインパクトがないと評価されない。目立つ酒については、その後のお酒を補正をして評価する必要がある。
  • きき酒の途中に水を飲んではだめである。なぜなら飲んだあと、3〜4点はわからなくなるからである。
  • 製造過程での、例えば、ほんの小さな汚れのようなもの、そんな小さなミスが味に出てくる。
  • 鑑評会では、金賞を受賞するお酒は、ストライクゾーンのような典型的なところがある。造る側も評価する側もストライクゾーンにそのお酒が入っているかを見ている。特別な世界である。
  • 酒販店としては、欠点を探すだけでなく、このお酒がどのような位置にあるのか個性を判断する。そしてそのお酒はどのような人に売ったらよいのかを考えている。

さて、今回のきき酒の対象は、参加者は一人1本ずつ持ち寄ることとなっておりごとう屋さん提供のお酒も含め20種類のお酒が集まった。

「今回の試飲酒」

  1. 悦凱陣無ろ過生 オオセト62%
  2. 萩の露 序 2002 特別純米 山廃
  3. 早瀬浦 御食国の恵み 山廃純米
  4. 王禄 超辛 本生
  5. 浪乃音 2007 純米大吟醸 原酒生 愛山50
  6. 浪乃音 2005 純米大吟醸 原酒生 愛山50
  7. 浪乃音 2007 純米吟醸 生 山田50
  8. 浪乃音 2007 純米吟醸 生 山田50 7の酵母違い
  9. 浪乃音 2006 大吟醸 雄町50 火入
  10. 浪乃音 2007 大吟醸 斗ビン 山田40 生
  11. 浪乃音 2007 純米吟醸 山田50 火入
  12. 浪乃音 2007 純米大吟醸 原酒生 雄町50
  13. 小左衛門 純米吟醸47号 50%
  14. 宗玄 無ろ過生 純米雄町
  15. 而今 にごり酒
  16. 牧水 生もとづくり 純米吟醸
  17. 鷹勇 H2 大吟醸 生詰め
  18. 大黒正宗 大吟醸 35%
  19. 浪乃音 2007 純米大吟醸 山田40
  20. 旭菊 阿蘇有機米

説明が終わりいよいよ試飲が始まった。試飲終了後、点数と感想を一品について一人ずつ発表することとなっている。野暮は言えないので緊張しての試飲である。約1時間、10人の参加者は一言も発せずに黙々と試飲する。通常、お酒を飲むときはワイワイガヤガヤするのが普通である。一種異様な光景であった。

「無言で1時間真剣にきき酒」

試飲のあと、ごとう屋さんの進行で、それぞれが感想を述べあった。

「まさに勉強会」

お酒を飲む人に好きな理由を尋ねると色々な言葉が帰ってくる。「美味しければよい。」「雰囲気が好き…」等々 お酒には様々な役目があり、それぞれの人がそれぞれの楽しみ方をしている。今回の会は、なぜ私はお酒を飲むのかについて改めて考えさせてくれる機会となった。美味しいものを食べる。旨い酒を飲む。これらのことは快であり、人は根源的にこのような機会を求めている。しかし、こんなことだけを私は求めているのではない。最も嬉しかったのは、この機会が感覚の覚醒という自分の好奇心を満たしてくれたことである。まだ自分の中で整理されていないが、快や酩酊よりそのあたりの探究心や好奇心が満たされた喜びが大きかった。

今、私は、ジェフ・ジャピロというアメリカ在住の作家の杯でお酒を飲んでいる。少々陶芸的な話で恐縮だが、この作家は、備前の伊勢崎淳氏のもとで修業した焼締系の作家である。この杯は、見込み(上から見た姿)、右から見た姿、飲み口は最高だが、左から見た姿はケロイド状に引きつり、目を覆わんばかりである。この姿を左側が良ければ最高だったのにと考えるのではなく、実はこの左側こそが右側を支えていることを理解し、愛さなければならないと思っている。つまり、バランスのよさという言葉があるが、プロでない私たちはバランスのよさではなく、突出した部分を愛することも許されている。一歩進んで、私は、常々、客観的によいものではなく、だめな中にもよいところを見出したい。味覚や嗅覚は、曖昧な部分があり、そのために美と醜は微妙な境界線を形作っている。プロが客観的に見て「これがよい」ということは全く正しい。プロの判断に間違はない。そしてそれが購買へと繋がっていく。しかし、私たちアマチュアはもっと自由に愛すべきところを見出してもよいと思う。

最初にごとう屋さんからの説明があったとおり、味、香というものは、一人ではなかなか気がつかない種類のものが多い。すっきり、もたつく、ヒネ、生ヒネ、などは、リポーターも理解できるが、味のピークを過ぎている、焦げ臭、ぬかの臭い、口の中に張り付く、管理が悪いなどの表現は理解できていない。このような言葉が参加者からでたとき、すぐその場ですぐ確認できる今回のような機会は、自分自身の感覚を磨くよい経験の場である。
特に自分の持参したお酒について、多くの人に批評してもらうことができ、目を開かれる思いだった。しかし、その欠点と呼ばれたところに、そのお酒の愛すべきところが隠れているとも密かに思っている。
確かにプロは万能である。私たちはそれを学び先ず感性を洗練していかなくてはいけない。しかし、その先にある探究はアマチュアにこそ許されたことなのではないかと思う。

今回の誘っていただいた勉強会は、私の中での大きな発見のきっかけになるような会で大変ありがたかった。最後にお誘いいただいたごとう屋さんに感謝の言葉を申し上げたい。

(報告:T)

〔戻る〕