三重県酒造組合が主催している新酒の新酒品評会が開催された。三重県の酒を網羅的に勉強できる良い機会なので参加した。
第37回三重県新酒品評会公開きき酒会
日時 平成19年3月20日(火)午後4時~6時30分
場所 ホテルグリーンパーク津6階宴会場
JR名古屋経由で津に向かう列車は、卒業式の季節である。そこここに、矢絣の着物と袴、和服と袴の卒業生達が華やかな声で話し合っている。風は強いが春の陽も一際強い陽になった。
会場のホテルは、JR津駅に隣接している。開会時間までまだ2時間ほどある。駅の周辺を散策することにする。津は通過したことはあるが、歩いたことはない。
護国神社には献納された酒樽が並べられている。
津藩主の別荘があった津偕楽公園は桜の開花を待ちかねて、茶屋が所狭しと競い合っている。もう間もなく、花見の客が公園内に充ちることになるのだろう。それにしても、陽ざしは春だが、風は厳しい冬の風である。
ホテルに戻り、6階に上がると、受付があり、会場の大宴会場では一般に先立って、関係者向けの利き酒会が行われているようである。背広にネクタイ姿の人達が多く、蔵開放とは違った、公的な雰囲気である。
受付を済ませ、出品酒の資料と利き酒用のプラスチックの利き猪口を受け取り、待合いコーナーの椅子に座り、参加蔵、出品酒の確認をする。
【出品蔵と出品酒】
平成19年3月1日現在、三重の酒造場は48場
北勢地域(桑名、四日市、三重郡、鈴鹿市) 17場
中南勢地域(津市、松阪市、多気郡、伊勢市) 16場
伊賀地域(伊賀市、名張市) 15場
出品酒は6部門に分かれている。
吟醸酒の部 42品目 首位賞:鈴鹿川(清水醸造) 優等賞:15品目
純米吟醸の部 22品目 首位賞:三重の寒梅(丸彦酒造) 優等賞:10品目
純米酒の部 25品目 首位賞:俳聖芭蕉(橋本酒造場) 優等賞:12品目
本醸造の部 23品目 首位賞:初日(油正) 優等賞:12品目
普通酒の部 24品目 首位賞:鈴鹿川(清水醸造) 優等賞:11品目
新商品の部 3品目
待ちわびた一般公開の時間になり、会場である大宴会場に入る。
入口から奥に向かって、テーブルが3列並んでおり、左から、吟醸酒の部、純米吟醸の部、純米酒の部、本醸造の部、普通酒の部、新商品の部に区分され、奥に向かって区分毎に出品酒が並べられている。
首位賞の出品酒には、誇らかに紅白のリボンが付けられている。受賞酒には金のラベルが貼られている。
利き酒は、出品酒の前に置かれた蛇の目の磁器の利き猪口を使うか、出品酒にセットされているスポイトを使い、渡されたプラスチックの利き猪口を使うか、どちらでも良い。
【利き酒】
吟醸酒の部から利き酒を始めることにしたが、139品目の出品酒を2時間半で終了するのは、困難と思われたので、受賞酒を中心に利くことにした。
時間終了まで、極力多くの出品酒を利かせていただくことにした結果、次の通りとなった。
吟醸酒の部 42品目中 27品目
純米吟醸の部 22品目中 13品目
純米酒の部 25品目中 15品目
本醸造の部 23品目中 10品目
普通酒の部 24品目中 3品目
新商品の部 3品目中 1品目
合計 139品目中 69品目
品数が多く、個別の評価は煩瑣なので、印象的なところだけ報告するが、あくまで筆者の私見である。
吟醸酒の部
鈴鹿川は2点出品(No.13、14)されている。
首位賞の鈴鹿川は、スッキリとした入口、広がりがあり、バランスの取れた味で、癖を感じない上品さが有る。もう1点の鈴鹿川は優等賞であるが、同様の世界であるが、首位賞に比べ、香りがやや高く、味にメリハリが有るように感じた。
後で、会場に居合わせた内山智広杜氏(最近注目されている「作」の杜氏さんでもある)にお聞きすると、首位賞は単一タンクのものでブレンド無し、優等賞はブレンドされたもので、香りは首位賞の方が高いとのことであった。
No.28 半蔵(大田酒造) 軽く、広がりのある吟醸酒の世界、酸が薄めで物足りないが上品である。
No.34 高砂(木屋正酒造) 目下注目の「而今」の蔵の出品酒で、今回期待していた蔵の出品酒であったが、資料によると入賞しておらず、硬い感じの入口で、広がりが無く、味がすぐ終わり、後口は軽い甘苦である。期待が大きかっただけに、残念な気がした。
No.35と36 天下錦(福持酒造場) 吟香有り、広がりのある吟醸酒らしい世界でありながら、味のある酸の厚みもあり好印象であった。
純米吟醸の部
No.5 首位賞:三重の寒梅(丸彦酒造) 吟香有り、吟醸酒らしい広がりのある世界、酸の厚みがあり、後口も癖がない。
No.6 入魂宮の雪(宮崎本店) 軽い入口、広がり有り、酸も軽い、上品さ有り。
No.19 天下錦(福持酒造場) 吟香あり、吟醸酒らしい世界、甘く、広がる、後口の癖が無くスッキリしている。
純米酒の部
No.21 首位賞:俳聖芭蕉(橋本酒造場) 入り口は軽く、酸味は比較的薄い、甘苦系の味、後口は軽く、残味の癖はない。
No.1 青雲(後藤酒造場) 甘く、酸味のある、嫌味のない世界、後口も良い。吟醸酒のような感じの純米酒。
No.6 三重の寒梅(丸彦酒造) 酸の厚みのある味、純米酒らしい世界。
No.8 鈴鹿川(清水醸造) 程よく調整された甘く丸い薄い酸味の癖を感じさせない純米酒。後口も良い。
No.15 酒屋八兵衛(元坂酒造) 甘く薄い酸、軽い世界で、吟醸酒の風格。
No.23 参宮(澤佐酒造) 甘く酸味のある一方、吟醸酒の風格のある世界。
本醸造の部
No.10 首位賞:初日(油正) ナッツのような香り、癖のない味、後口は軽いが、尾を引く、ピリ辛感はない。
No.9 鈴鹿川(清水醸造) 甘く、軽くスッキリとした世界。後口は軽いピリ味。
No.19 俳聖芭蕉(橋本酒造場) 甘い入口、軽い世界、吟醸酒の風格、後口も良い。
No.21 天下錦(福持酒造場) 甘くスッキリとした味、添加アルコールの味が僅かにするが気にならない。後口のピリ味もなく、キレよい。
普通酒の部
No.6 首位賞:鈴鹿川(清水醸造) 甘く軽い酸味を感じるが、バランスが取れており、味のピークのない調整された味である。スッキリとして嫌味がないので食中酒として好適。
No.23 新商品の部 参宮(澤佐酒造) 酸味のある丸い世界。麹の味のする新酒らしい味わい、嫌味のない味である。純米酒の風格である。
【感想】
三重の酒というと、過去2回ほどの蔵見学の体験から来る純米酒が中心の蔵が多いとの思いこみがあったが、今回の参加で、それは筆者の不勉強であることが、体験できたのは幸いであった。
全国新酒鑑評会の受賞蔵も、過去20年のデータでは、黒松翁(森本仙右衛門商店)と若戎(若戎酒造)が9回、参宮(澤佐酒造)と白梅(笹野酒造部)が8回、瀧自慢(瀧自慢酒造)が7回の受賞歴があり、吟醸酒の技術レベルが高いことを証明している。
今回、印象の良かった蔵も、データの裏付けを持っていた。
天下錦(福持酒造場)が6回、俳聖芭蕉(橋本酒造場)が4回、半蔵(大田酒造)が3回。
酒屋八兵衛(元坂酒造)と三重の寒梅(丸彦酒造)は昨年(平成17年)初めて受賞している。若い杜氏が活躍し始めたのであろうか。
鈴鹿川(清水醸造)は、昨年と今年、県の鑑評会のすべての部門に出品し、出品酒がすべて首位賞、優等賞受賞という快挙を行っている。今回は、吟醸部門に加えて、普通酒部門でも首位賞の2冠であったが、どのクラスの酒も力を抜かない姿勢が感じられる。
内山智宏杜氏は、今人気の「作」の杜氏さんである。
(内山智宏杜氏)
鑑評会の審査方法は、常温で、開封したまま、あるいはお猪口に注がれたままの出品酒を利いていくことになる。午前中から、数時間以上開封されている物も有るであろうし、吟醸酒については、微妙な香りの散逸、味わいの変化が避けられず、条件は良くないと考えられた。
造りによっては、審査方法の影響を大きく受けることがあるかも知れない。
与えられた条件は、どの出品酒も共通なので、それを考慮して造る必要がある。
名古屋国税局管内の東海4県で新酒鑑評会の一般向け公開を行っている県は、三重と静岡であるが、三重は酒造組合がホームページを開設し、三重の酒の広報を行っているが、筆者の承知している範囲では、静岡はホームページを持っていない。
三重県酒造組合は、平成16年4月1日 三重県内の津・桑名・四日市・鈴鹿・南勢・伊賀の六酒造組合が一本化し、新発足したとのことである。
一般公開は、6年ほど前から実施しているそうで、実施する経費は、酒造組合の組合費で負担しており、行政の補助はないそうである。
最近注目を集めている「作」(清水醸造)、「而今」(木屋正酒造)を醸しているのは、若い杜氏であるが、長い歴史の伝統の中から、新しい芽が出てきて、県外から高い評価を受けている背景には、こうした酒造組合の活性化があるように感じられた。
愛知と岐阜は一般公開もホームぺージの広報も行っていない現状である。三重県に習い、若い杜氏が互いに切磋琢磨し、技術を伸ばし、県外から高い評価をされるような、環境造りをお願いしたいものである。
(報告:Y)