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名古屋市緑区大高 山盛と神の井の蔵見学に行ってきました。2007.2.25

昨日の冷たい北風はやんだが、冷たさがまだ残っている朝となった。JR大高駅には9時に着いたが、見学の人らしい人影はない。開始時刻まで1時間あるから、まだ人は出ていない。駅員さんに蔵のある方角を教えて貰い、歩く。
途中、電柱等に蔵見学の表示板が貼り付けてある。

蔵見学が始まるまでに、大高の3つの蔵の写真を撮り、大高城趾に行くことにする。
神の井酒造の前にはまだ見学者はなく、ガラス戸の中に準備している人の姿がある。
山盛酒造の前ではテントが張られ賑やかな人声がする。蔵開放は行っていない万乗醸造はひっそりと静まりかえって、正門の前の駐車場では子供達が自転車の練習をしている。

  

大高城趾に登るには、民家の前の細い路地を入っていかなければならない。
坂をすこし上がると左に案内板がある。
この辺りは、戦国時代末期、今川氏と織田氏の勢力のぶつかり合う地域であった。
永禄三年の桶狭間の戦いの際、織田勢に包囲された大高城に対し、今川義元配下にあった徳川家康が奇略を用いて、食料を運び入れる事に成功したと書かれている。
坂を登るとかなり広い平坦な敷地に出る。一段高くなった場所には石碑があり、明治維新の頃、この地の名族久野氏が整備をして、松桜を植え古城園としたと書かれている。この久野氏は、神の井または万乗醸造の先代なのであろうか?

  

蔵開放の時刻が近づき、反対側の坂を下りると、左側はブランコ、滑り台が置かれ、子供の遊び場とされている。強者どもが夢の跡である。
住宅の横を歩くと、甘くやるせない香りがする。沈丁花である。見回すと左の住宅の植え込みに紫と白の花を沢山咲かせているのが見えた。春である。

  

神の井の前は行列が出来、店内は見学者で雑踏していた。1時間前が嘘のようである。順番を待ち見学が始まると、グループ単位に説明員が付、蔵内を移動することになった。構内は鉄骨の建物が多く、機械化も進められている、木造の蔵は大正年間の物だそうである。仕込みタンクにはサーマルタンクも含まれていた。

  

構内の建物の前に試飲コーナーが設置され、4種類の銘柄が提供されている。

  1. 神の井 しぼりたて 生原酒
  2. 神の井 大高 純米吟醸
  3. 神の井 純米大吟醸 寒九の酒
  4. 神の井 大吟醸 あらばしり

1は、新酒らしく、甘く厚みのある味、酸味苦味あり、力強い。
2〜3は吟醸酒であり異なった風格になる。スッキリとした軽い入口は共通しており、軽い酒の良さを感じる。
2は酸味の軽い広がりがあり、端麗である。
3は香りはあまり無く、広がりがあり、軽い酸が感じられるが、引きも早く、最もスッキリ感が強い。
4は、軽い甘い入口、寒九に比べると厚みがあるが、後口の前にやや辛くなる。

 

販売コーナーの人の波を泳ぎ、数有る銘柄の中から超辛口本醸造18カラットを購入した。店では見かけないので、理由を聞くと、この銘柄は昭和区の酒のつぼいとの共同企画の物だそうで、蔵元と酒のつぼいだけで販売しているとのことであった。

山盛酒造へ向かうと、すれ違う人は、リュックを背負いウオーキング姿の中古年のおじさん、おばさんが多い。蔵開放に合わせ、緑区ルネッサンスフォーラム主催「第9回史跡散策会」が開かれているらしい。

山盛酒造の受付で記帳を済ませ蔵内にはいると、ここも人で溢れている。

 

此処の見学は説明板の表示方式である。所々に説明員も付くが、多くはない。
ヤブタ式の搾り機の説明が参考になった。
ピストンで圧力を掛けて搾るのではなく、ピストン側は支えるだけである。写真の黒いボードと搾袋を交互に下げ、黒いボードの中に圧縮空気を入れ、両側から挟み込み圧力を掛けていく構造とのことである。日本酒は優しいのである。油圧プレスの様につぶすのではなく、両側から穏やかにゆっくり優しく搾るのである。

 

進路の最終が試飲コーナーと販売コーナーになっている。此処は長蛇の列で一寸刻みの進行になった。
試飲銘柄は3種類

  1. 鷹の夢 本醸造
  2. 鷹の夢 純米吟醸 しぼりたて 生原酒
  3. 鷹の夢 純米吟醸 うすにごり

1は酸味のある厚みのある味、新酒だが麹味がないのがよい。
2も酸味のある厚みのある味、原酒らしく押しのある性格である。
3酸味が軽くなり、スッキリとした酸味に軽い苦味がある。スイスイ食中酒として飲める感じ、笹濁り風の味わい。ついつい飲み過ぎてしまいそうな味わい。
おみやげは、これにする。

 

蔵から外に出ると、テントが張られ、無料の甘酒、有料の牛すじ煮、ソーセージ等が提供されており、人々は道路にまで溢れている。左側には大高の歴史について、古地図、説明書が掲示されている。史跡散策会の出発点になっているようだ。
甘酒を貰い、牛すじ煮を買い、休息所のテーブルに座ると目の前のおじさんが、酒に顔を赤くして、たまたま居合わせたと思われる左側の若い娘二人に、「最近の若い娘は...」と大きな声で、しゃべっている。本人は気持ちよさそうだが、娘二人は仕方なく合わせているようだ。酒を飲めば、人にも気持ちよく酔いたいものである。

帰り道、これから蔵見学に行く人とすれ違う。矢張り、中高年の人ばかりである。

【感想】
名古屋市緑区大高という狭い地域に、3つの蔵があり、それぞれ味わいの異なる酒を醸していることは、不思議でもあり、考えてみると素晴らしいことだ。
今日のイベントには参加していない万乗醸造の「醸し人九平次」は滑らかなメリハリのある味の広がりで全国的な人気銘柄であり、山盛酒造は米の旨みを生かした正統的な造りであり、神の井酒造の吟醸酒の少し枯れた世界は、通の人に愛される上品さを感じさせる。過去20年間の全国新酒鑑評会受賞歴では、それぞれ、2回、1回、5回の受賞があり、技術的な実力も有り、精進も続けられている。

3つの蔵はこの地域にとって大きな財産であるのは勿論だが、名古屋市にとっても大きな財産であり、将来に向かって保護、発展させていく必要があるだろう。
その意味では、現在のイベントのあり方は物足りない印象がある。JR東海道線の大高駅から歩いて10分程度で行くことが出来るという大変な地の利に恵まれている。JR、3つの蔵、地元商店街が意志を合わせ、子供連れの家族、若い人達が参加できる催しを考えれば、大高城趾他の史跡にも恵まれており、将来的に発展する大きな環境を持っている。
まずは地元の人が3つの蔵を中心にし、我が町の歴史的な財産に誇りを持ち、自ら楽しむ手作りの祭りにすれば、訪問した人々は、歴史も銘酒もお祭りも昔懐かしく心が癒される体験として、JRの列車に乗り込むことが出来るだろう。

毎年春秋に開催される諏訪湖の5つの蔵を中心とした祭り「上諏訪街道呑み歩き」は、良いお手本になる。地元の有志「上諏訪街道21」が、平成10年3月に、第一回を開催し、当初500人程度の参加者だったそうであるが、今や数千人が全国から参加するまでになっているそうである。
3つの蔵と史跡を生かした祭りが地元の手により開催され、そこに人々が集まり楽しむことができれば、歴史的財産が将来にわたって生かされることになるのだが。

(報告 Y)

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