T氏の情報により、フェアのイベントとして「日本酒を楽しむためのミニ講座」が開催されるというので行ってきました。
ミニ講座の定員は6名なので、早めに行き、整理券を入手後、時間まで試飲する予定で出かけた。
秋晴れの日になり、名古屋・栄周辺は折から名古屋まつりで、英傑行列の見物客であろうか、人で満ちあふれている。
地下の特設会場につくと、時間がまだ12:30である、流石に日本酒の世界はまだ人が溢れてはいなかった、ホッとすると同時に、拍子抜けした。
整理券は13:00から配布するとのことで、参加蔵さんの試飲コーナーを回り勉強させていただくこととした。
ミニ講座のカリキュラムは、次のとおりである。
10月14日(土)
14:00~ 生道井(東浦町)
15:00~ 白老(常滑市)
16:00~ 長珍(津島市)
17:00~ 蓬莱泉・明眸(設楽町)
10月15日(日)
14:00~ 尊皇(岡崎市)
15:00~ 孝の司(幡豆町)
16:00~ 勲碧(江南市)
ミニ講座の開始時間になり、会場の地酒フェア バー・カウンターに座った人は5人であった。年齢層は幅があるが、男性ばかりである。
開始早々、遅くなりましたと挨拶されつつ隣の席に女性が座られた。
意外にも、日本酒の会のメンバーであるIさんであった。Iさんは、バイリンガルで才媛である。その東奔西走・縦横無尽の活躍振りは、ブログ MarikoShinbunを見ていただければ一目瞭然である。俄に心強く、また楽しく感じたものである。
第1講座14:00~ 生道井(東浦町 原田酒造)桜井氏
講座は化学の実験から始まった。円筒形のガラス器(メスシリンダー?)を取り出し、水を入れる。何が始まるのかと思うと、日本酒の講座である。日本酒度の使い方の説明であった。
まず、日本酒度計(釣りに使う浮きの様なもの)を水に浮かべる。水の日本酒度を測ると0を表示する。次に、スティック・シュガーを取り出し、中身の砂糖を水の中に入れる。日本酒度計を浮かべると、目盛りは-10を表示する。つまり、砂糖水は甘口である。アルコール度の高い酒は、辛口になり、日本酒度計は+を表示する。
次に、実際に醸造の現場で作成された「もろみ経過簿」のコピーを配布され、「衣ケ浦若水」の仕込みタンクの管理がどのようにおこなわれているかの説明があった。通常の蔵見学では、このような話は聞けない、これだけでも今日参加した価値がある。
経過簿には、三段仕込みの初添えから始まり上槽までのもろみの温度とボーメ(日本酒度の変形)が毎日計測された結果がグラフ化されている。
ボーメのグラフは、大きなトレンドは描かず、大きく波を打っている。初添えの段階は上昇、中添えでは下がり、一旦上がるが、留め添えではまた下がり、もろみの初期段階から次第に上がり(並行複発酵であるが麹の糖化力が酵母の食欲を越えている)、甘くなっていく。留め添え後1週間ぐらいでピークになりその後は次第に下がっていく。しかし、留め添え後3週間後にまた上昇する。その時期がこのタンクの上槽(搾り)のタイミングである。
次に、酸度の計測についての説明。これはビュレットという道具を用いる。10CCの試料に対し、アルカリ水溶液で中和するのにどの量必要かを計測する道具。
目に見えない微生物を相手の酒造り、タンクの健康度合いを計測し、味で検証し、判断をして進められていることが理解できる。
配付資料に「日本酒のタイプと料理との相性」(日本酒造組合中央会)、「ワインと飲用温度と料理の相性が一目でわかる表」があったが、なにぶん30分のミニ講座である、日本酒と料理の相性のお話をお聞きする前に時間切れとなったのは残念である。続編講座を望みつつ終了。
第2講座15:00~ 白老(常滑市 澤田酒造)三浦氏
講師は若い(昭和48年生)が杜氏さんである。澤田酒造の目指す酒造りを熱心に語っていただいた。
白老の酒造りの特徴は「古式伝承」である。昔ながらの伝統的な酒造りに拘っている。若い杜氏さんだが基本はオーソドックスで、澤田酒造の方針に共鳴して入社したとのことである。技術的な意味づけのない省力化のためだけの機械化は行わず、伝統的な造りを伝承しようとしている。
麹作りでは、手間の掛かることを厭わず、麹蓋を使用している。甑は木製のものである。いずれも技術的な判断がある。力強い突破精の麹を作るには麹蓋が最適であり、外硬内軟の蒸しを実現するには木製の甑の水分調節力が必要である。
木製甑の制作、20年もの古酒の話題等は白老ホームページをご覧下さい。
第三講座16:00~ 長珍(津島市 長珍酒造)桑山氏
長珍酒造の目指す酒につき情熱満ちた語り口で講義していただいた。
氏の酒造りは越後杜氏にルーツがあり、香りのある華やかな吟醸酒を造り、全国新酒鑑評会で金賞を4回受賞し、名古屋、新潟の鑑評会でも数々の受賞歴のある華やかなものである。しかし、100%満足はできず、フルーティな香りを楽しむのであればワインを飲めばよい、日本酒は矢張り米が本来持つ旨みを感じさせるものでなければならないと考えている。
技術的には蒸しが最も重要であると考える。和釜で蒸すと外硬内軟の蒸しが可能になる。甑は大・中・小を使い分ける。端麗な酒には硬めに、純米酒には柔らかめに蒸す。
食中酒として料理とマッチングする、喜ばれる旨い酒が今のコンセプトである。
第四講座17:00~ 蓬莱泉・明眸(設楽町 関谷醸造)柴田氏
米・水・吟醸香・冷やおろし・古酒について講義いただいた。
米:
酒造好適米は若水(平野部で産出)、夢山水(山間部で産出)、山田錦(徳島産)を使う。
精米割合は、重量比である。
水:
35%精米を実現するには6日間の時日を要する。
硬水と軟水の違い。
ミネラルウオーター2種の試飲を行った。
SPORT 硬度1816の超硬水。
HAWAII 硬度0の軟水。 比べて飲むと味の違いが実感された。
古来、灘の男酒・伏見の女酒と言われ、灘はシャープ・辛口、伏見は滑らかな酒と言われてきた。その違いは灘の宮水は硬水で、伏見は軟水であるためと説明されてきたが、実は日本の水の硬度は200~300であり、いわゆる硬水ではない。
蓬莱泉には田口本社と稲武の吟醸工場があるが、水が本社の方がより軟水である。
吟醸香:
酵母をいじめることにより生成される「切なっ屁」が吟醸香である。
糖を作りすぎないように麹を制御することで酵母が吟醸香を作り出環境を作る。
2日目 10月15日(日)
尊皇(岡崎市)、 孝の司(幡豆町)、 勲碧(江南市)のミニ講座については筆者は、地域行事のために参加することが出来ず、報告する事が出来ない。
しかし、幸いにもIさんが2日目も参加されている。
MarikoShinbunの愛知の地酒フェアのレポートをお読みいただきたい。
レポートの他に、ミニ講座の写真も数多く掲載されているので、当日の様子を眼で見ることができます。
【試飲印象記】
ミニ講座の時間外に28種類ほど試飲させていただきました。すべてを記載するのは煩瑣ですし、印象に残った銘柄のみ報告します。担当の方とすれ違いになった蔵は試飲できず網羅的ではありませんし、元より筆者の嗜好の独断によるものであることを考慮下さい。
尊皇 夢山水十割 奥(熟) 2004BY 純米吟醸 生原酒
ナッツ系の香り。厚みのある生き生きとした味。残味も良い。
2004BY瓶貯蔵されたもの。フェア限定酒である。
夢山水十割 奥(旬) 2005BYは、2004BYに比べると、香りは低く、味が薄い感じがする、残味は酸味・甘み系。
夢山水十割 奥はアルコール度数が高く、熟成につれて、香り・味の厚みが増すようである。飲み応えのある世界は、酒飲みには好ましい。
長珍 4種
それぞれ、はっきり世界が異なり、異なったコンセプトで造られていることがわかる。設計通りに造れる蔵のようである。
長珍 若水 本醸造
旨み、酸味、苦味、熟成味すべてあり。伝統的な日本酒の風格。
タンクで常温で寝かせたもの。食中酒向き。
長珍 特別純米
米の旨みがあるが、スッキリしている熟成香は無い。
17BY、常温タンク貯醸。
長珍 純米吟醸 H17BY 山田錦
香りよい、ふくらみはないが、スッキリとした世界。残味は良い。
17BY、タンク貯蔵、15°C。
長珍 禄 純米大吟醸 H16BY
香りよく、口に含むと広がり・ふくらみあり、五味調和している。
残味よい、軽い苦味系。16BY、0°Cで瓶貯蔵。
【感想】
愛知の地酒フェアは松坂屋が年2回開催しており、北海道大物産展の開催と同時期に行われているとのことである。
3月のフェアとは異なりミニ講座が今回の特色であったが、試飲会・蔵見学とは違った説明が聞け、勉強になった。時間が短いのが残念である。
こうした企画を実行された松坂屋さんに感謝申し上げたい。次回のフェアにもミニ講座の開催を是非お願いしたいものである。
最後に一言、ミニ講座には当該蔵の銘酒とつまみが無料で提供されました。
松坂屋さん、ごちそうさまでした。
(報告:Y)