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「第196回季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」に参加しました。(2006.8.20)

かねて念願の「ざっぶんの会」に、ついに参加しました。
「季節の美味しさと日本酒を楽しむ集い」は毎月開催されていますが、「ざっぶんの会」は春夏秋冬年4回開催される特別な例会になります。数多くの銘酒と蔵人さんが一堂に会するまたとない機会です。
主催者は岐阜市の酒の中島屋。店主の西川真一郎氏は酒店店主という表現の範囲には収まらない方で、寧ろ「日本酒の伝道師」という表現が相応しい方です。
最近好きな言葉を使えば「修証不二」の証跡を歩んでおられます。毎月196回の例会を実施され、また春には「美濃・飛騨酒蔵の集い」を開催されていますが、今年で14回目です。その歴史の重さに敬服せざるを得ません。

毎日暑い日が続く今夏だが今日も暑い。岐阜駅の長良口を出ると灼熱の太陽が照りつけていた。そのまま進むと、駅前の道路を跨ぐ陸橋を歩くことになった。
。数年ぶりに駅前を歩いたが、景色がすっかり変わっていた。左手には高層ビルが建築中である。すっかり明るく、近代的景観になっている。


 

陸橋を降り、金華橋通りを歩くと多くの店がシャッターを下ろしている。今日が 日曜日の所為だろうか。車の往来の他、人影はない、何かダリの世界にいるようで 、不安である。人を求めて、新岐阜駅方向へ右折する。商店街に出る、人は歩いて いるが、混雑はしていない。地図に従い神田町の交差点を左折し、文化センターを 目指す、この通りは並木の緑が涼しさを感じさせる。

文化センター前の小路を左に入り、和食彩「ざっぶん」を探すとすぐ左に目に入った。
ガラス戸の前がウッドデッキのオープンテラスになっている。「ざっぶん」の表示がなければ喫茶店かイタリヤ料理店の佇まいである。

すぐ前を行く常連さんらしき人の後を追い、デッキを通過し、ガラス戸を引き、店内に入ると、定刻前の12:50であるが、参加者たちは開始を今や遅しと待っている熱気である。左側に食器・酒の並ぶ棚、通路を挟んで右側が小上がりのテーブル席になっている。


入り口で名前を言い、会費を支払い参加手続きを済ませていると、「おーいY。Yじゃないか!」と呼びかけられる。初めての参加、他にYなる人物がいるのかと声の方向を見やると右側の壁寄りの席に紳士が2名座っている。手前の人は知らない人である、その奥の人物は知り合いであった。
ゼミの同期生のN氏であった。思いがけないところで出会ったものである。お二人の席の隣は、「お姐さん」のためにリザーブされているかと思ったが、空いているとのこと。N氏の隣に座らせていただき、ご挨拶する。

テーブルの上にはお造り、いなり寿司、晒しタマネギと豆腐のサラダが並んでいる。座ると若い女性がどうぞお召し上がりくださいとガラスの器を出していただく。見ると冷々の「ところてん」であった。季節は夏である。

会は程なく日本泉さんの「ふなくちとり」の乾杯で始まった。
この会は日曜日に「ざっぶん」さんを借り切って開催される、定員25名の内7名は蔵の方である。積み重ねた歴史により、最初から打ち解けて、ワイワイガヤガヤである。
次々に供される銘酒、料理と会話で息つく暇もなく時は流れる。しかし、開会宣言はあるが、終わりは無い。酒が無くなるまでの長丁場である。
午後4時頃であったろうか、銘酒の味見と会話に夢中になっていると、バタンと人の倒れる音がした。誰か病人でも出たかと驚いたが、見ると若人が小上がりの上に伸びている。深酔いしたようである、店の方は落ち着いたもので、手早く座布団をたたみ枕を作り、そのまま横にさせる。どうも、時に起こる事のようである。長丁場、最後まで完走すれば、無事是名馬である。

【お料理】

  • お造り
    中トロまぐろ、しゃこ、秋刀魚、白身(鱸?)
    それぞれ美味しいが、季節のはしり秋刀魚が美味しく、しゃこは小振りだが茹でたて、噛むと旨みが流れ出るのがわかる。
  •  
  • 焼き魚
    「季節の美味しさ」は鮎がテーマである。
    大振りの長良川の鮎が焼きたての状態で、一人一人配られる。塩が打ってありカリッと焼かれているので川魚の生臭さはない。本来ならばそのままかぶりつくところであるが、周囲、手を汚しそうなので、箸でいただく。新鮮で脂が良くのっている。
    季節の味に満足していると、暫くして、再び塩焼きの鮎が配られる。今度は、和歌山産とのこと。サプライズである。利くのは酒だけではないのだ、鮎も利くのである。
    「兄貴」氏は、この和歌山産は身は○○○だが、腹は今年食った鮎で最も旨いと評価された。日頃はサザエのワタ、秋刀魚の腹、鮎の腹は食べない筆者であるが通人の言葉である、素直に従い腹をいただく事にした。
    長良産に比べると小振りであるが、腹に白子があり、腹の苦みにまったりとした味を加えて間違いなく美味しいものであった。しかし、「兄貴」氏のそれは雌の鮎だったように思えるがどうだったのだろう。
    フレッシュな長良産、熟した和歌山産それぞれ夏の美味であった。
  •  
  • 一夜干しのふぐ
    よくある硬い干物でなく、本当の一夜干しでジューシーである。
  • 蛤の串の干物
    硬いがよく噛んでいるとじんわりとした旨みが口に広がる、酒の肴にはもってこいである。
    これはどこかの蔵のおみやげらしい。最初のところてんもおみやげらしい。
  • 鱸の兜焼き
  • いなり寿司
    誰か好きな人がいるらしい。筆者も好き。
  • 晒しタマネギと豆腐のサラダ
  • 冷やし釜揚げうどん
    氷水の張られた桶に浮かべられて、夏の味わいである。
  • 最後はバースデイ・ケーキ
    どなたかが誕生日とかで、ケーキに蝋燭を立て、ハッピバースデイを全員で歌う。是は遠慮したので味はわからないが、美味しいものに違いない。

【銘酒】
 お待たせしました。利いた銘酒の数々です。
 (評価は独断と偏見の産物、一つの意見としてお読みください。)

  出品酒
 <純米酒を楽しむ>

  1. 愛媛 京ひな 一刀両断 純米大吟醸
    吟醸香はあまり無い。透明で雑味のない味わいだが、厚みが感じられない、こなれすぎており過熟成なのだろうか。
    残味は酸の後、軽い苦みが残る。評価7.5。
  2.   
  3. 愛知 長珍 純米吟醸 生詰
    吟醸香あり。五味は分離せず調和感のある味。敢えて言えば吟醸酒に多い苦味系。残味にややピリ感あり。評価7.5。
  4.   
  5. 福井 梵 熟成純米大吟醸 純米大吟醸
    吟醸香あり。メーカーが2年熟成した熟成酒。五味分離しない厚みのある味である。広がり感はあまり無く、味が真ん中に寄る。評価8.0。

 <今日の贅沢・大吟醸入賞酒・飲み比べ>

  1. 滋賀 松の司 特別大吟醸 出品酒
    吟醸香あり。 厚みのある、調和感のある味わい。広がりもあり、ゆったりとした気持ちのよい世界。残身も嫌みがない、軽い麹の味が微かに尾を引く 。評価9.0。
  2. 岐阜 玉柏 大吟醸 金賞受賞酒
    吟醸香あり。 調和した味で広がりもある。熟成酒特有のものか、飲み下ろした後の香りが強い。きつい印象が残る。評価8.5。
  3. 徳島 芳水 特別仕込み大吟醸 吟味
    吟醸香あり。 五味分離せず調和感のある味、味に厚みがあり、活動的、フレッシュな世界。残味もスーッと消えていく。一級品である。評価9.5。
  4. 滋賀 喜楽長 大吟醸金賞受賞酒
    吟醸香あり。 金賞受賞酒らしい味わいの酒。芳水の後飲むと広がり、厚みでやや劣る気がする。残味にややピリ感あり、キレのきつい印象。
    評価8.5。

 <熟・醇を飲む>

  1. 徳島 芳水 特別仕込み大吟醸 吟香 H14BY
    吟醸香あり。果実の香り、梨の香りがする。14BYの3年熟成酒である。
    広がりがあり、厚みのある味が中から吹き上がってくる感じがする。
    力が漲っている。上の芳水と比べると、味の躍動感、飲み下ろした後の香り がより強い。素晴らしい酒である。評価9.5+α。

  1. 福井 梵 極秘蔵 純米大吟醸 H6BY
    吟醸香あり。H6BYの12年熟成酒。上の梵と同じく、調和感のある味である。飲み下ろした後の香りの底に微かな老香を感じた。芳水の後の味見は不利である。かなり酔いが進んでいたので上手く利けなかったのかもしれない。評価8.0。

 <参加蔵の持参酒>

  1. 愛知 神の井 18カラット 超辛口 本醸造
    日本酒度18度の超辛口。三千盛の超辛口に比べると柔らかい味わいである。本醸造であるがピリ味はない。ぬる燗にして食中酒として、鰻の蒲焼きと合わせてみたい。
  2. 愛知 神の井 酔ってござる 吟醸
    吟醸香あり。 軽い爽やかな世界である。調和した味で嫌みな味はなく、フルーティである。名前のイメージと合わない気がする。残味は微かな苦味系。
  3. 愛知 神の井 純米美山錦
    雑味のないゆったりとした味、広がりもある。やや味が端麗である。残味は軽い苦味系。
  4. 愛知 蓬莱泉 吟醸工房 純米吟醸 生にごり 
    味は酸味系である。嫌みはない。フレッシュである。微粒子の白濁りがあり、舌触りに微かなざらつきがあるような気がする。吟醸工房の遠心分離器による酒と通常の搾りのものとブレンドされているとのこと。
  5. 岐阜 房島屋 純米吟醸50 無濾過
    ナッツの香り。丸く活発な味、酸味系の味である。
  6. 岐阜 三千盛 純米大吟醸
    吟醸香あり。酸味系の味だが調和感は崩れていない。厚みのある味で、広がりも大きくはないがある。残味も嫌みがないもの。辛口三千盛とは違った世界である。
  7. 岐阜 美濃錦 白雪姫 吟醸
    五味分離しない、透明な丸い味である。柔らかく嫌みのない世界で万人向き。残味はやや苦味系。
  8. 岐阜 長良川 大吟醸 2005BY
    ナッツの香り。 酸味が中心の辛口の世界、味の厚みより端麗系。
  9. 岐阜 日本泉 純米吟醸 ふなくちとり
    木の香りあり。まとまりのある味のある酒である。酸味の後、軽い苦味が残る。ピリ感あり。味が真ん中に集まる、広がり感はあまり無い。
    伝統の酒槽による搾り。搾りたてとのこと、冷蔵庫に3ヶ月置くと変化しそうな気がする。

【感想】

  1. 6時までの5時間が、あっという間に過ぎ去った、充実した内容の会であった。
    次の「秋」が待ち遠しい。
  2. 人との出会
    思いがけないところでN氏に遭遇した。他のゼミ生が宮仕えの道を進む中、彼は最初から社長の道である。世界を旅行し、視野の広い人である。会の中頃、急に名刺をくれる。今更何だろうといぶかしがると、右上を読めという。酔眼でよく見ると「SSI日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会 利酒師認定 659x」と肩書きがふってある。聞けば、10年以上前に取得し、商売に関係はなく、遊びとのこと。この道でも大先達である。多彩・多才な人である。
    N氏が「兄貴」と呼ぶ紳士。美酒・美食の日々を過ごされている人らしく、こだわりの人である。曰く、食米はコシヒカリより、ササニシキ。泡盛はクース(古酒)でなければ泡盛でない。
    沖縄には百回以上行き、飲み尽くしたが、今一番は「北谷(ちゃたん)の長老」。…評価の基準が氏そのものであり、明解で、快い。和歌山産の腹は確かに美味であった。
  3. 熟成とフレッシュ感
    熟成が進めばフレッシュ感(躍動感)は無くなると理由無く思いこんでいたが、そうではないらしい。
    8月定例会の王禄も今日いただいた芳水、いずれも14BY、酒店で3年熟成されたものである。王禄もそうであったが、芳水はそれ以上に香り、厚み、躍動感に圧倒される思いがした。酒の精が3年間の封印を解かれて、暴れ回り、爆発、躍動しているのであろう。
    日本酒の味は難しい。再現性が期待できないのである。同じ瓶でも日々に味が変化することは経験されること。
    「芳水 特別仕込み大吟醸 14BY」は再びまみえる日があるだろうか?
    あるとしても、その時の味は今日のものとは変わっているであろう。
    酒もまた「一期一会」である。
  4. 攻めのあと
    蔵の方お2人に同席させていただいた。専門家の話を聞かせていただき、この会の醍醐味であることが理解できた。
    そのなかで、面白い話を一つ。
    岐阜の日本泉さんは地下室に醸造場を置き、温度管理をきっちりされている蔵である。武山氏のお話では、搾りもこだわり、伝統の木の酒槽を使っておられるとのこと。
    同席の愛知の神の井の久野氏の話。酒槽で攻めきった後、槽の底に残っている酒、これがとろりとして極めておいしいと発言された。勿論商品化されるものではないので関係者しか楽しめないものである。専門家の言葉に間違いはない、酒好きは一度味わってみたいもの。
    早速、N氏と「兄貴」氏は地の利を生かして、武山氏に試飲の交渉を始められた。拘りの人たちである。実現の折には筆者も仲間に入れていただきたいものである。
     (なお、表題の「攻めのあと」は筆者の造語です。)
  5. 日本酒のブレンド

     

    蔵の中の話ではなく、飲み手側の話です。日本酒で作るカクテルがあるそうですが、飲む人がブレンドを楽しんでいるという話は寡聞にして知りません。
    筆者の好きな酒をイメージすれば、口に含んだ瞬間吸い込まれていく広がりがあり、味が分離せず、甘いかと問えば甘く、辛いかと問えば辛く、酸っぱいかと問えば豊かな酸味がベースになっており、底の方には苦味・渋みが潜んで締めている、是等が一体となって厚みのある躍動感のある旨みを作っている。
    飲み下ろしたあとは爽やかな余韻が残るというもの。
    会も一通り利き酒が終わって銘柄が出尽くした後、蔵のお二人にはお叱りを受けそうだが、真面目にイタズラをしてみた。
    目の前にあった「神の井 酔ってござる」と「日本泉 ふなくちとり」を杯の中でブレンドしてみた。両方それぞれに美味しい酒だが、神の井の爽やかな広がりにふなくちとりの味の厚みを加えたらイメージの酒になるのでは?が真面目なイタズラ(実験)の動機、お二方、了とされよ!
    結果は? 広がりは良し、次の味に移るときの滑らかさに課題があるが、旨い、後味も爽やかである。配合割合を変えればイメージに近づけるのではと感じた次第。
    日本茶はブレンダーが各産地のお茶をブレンドし、味を創ることが広く行われている。日本酒では蔵の中のブレンドはさておき、飲み手が自由にブレンドを楽しむ世界はあるのであろうか?


  6. 久しぶりに岐阜の駅前を歩いた。明るく近代的になった景観をみて、階段を下りると日曜日とはいえシャッターを下ろした店舗がまだ有り、人の姿もあふれている様子はない。
    「ざっぶん」には人があふれ、話が盛り上がり、美酒・美肴に楽しく幸せな時間を共有する人たちが集っている。
    生活のあらゆるジャンル、食べる・飲む・着る・創る・遊ぶ・住む…にその方面の伝道師と拘った人達が楽しく時間を過ごす空間ができれば、他の街から、他の県から人が集う活気のある街になる。
    「ざっぶんの会」はそれを証明している。それの魁である。

(報告: Y)

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