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ほうらいせん 吟醸工房「日帰り酒造り体験コースに」参加しました。(2006.2.13)

日本酒に造詣の深いH氏とM氏と芸文前で待ち合わせ、一路豊田市黒田町(旧稲武町)にあるほうらいせん吟醸工房に向かった。「空」で有名な関谷醸造は、設楽町と旧稲武町に蔵がある。設楽町にある本社蔵は、機械化された再現性のある酒造り、今回お邪魔する吟醸工房は、技術の伝承と基礎づくりを目指している蔵だ。
吟醸工房の体験コースは、実際に仕込み体験ができることが売り。パンフレットには、定員10名、参加費10,000円。参加費に含まれるものは、4合瓶2本(仕込んだもの)、きき酒、昼食代、白衣、作業帽とある。
普通の酒蔵見学では、なかなか蒸米や麹に触ることはできない。また、例えば上原浩先生の本で蒸しあがった米は「青っぽい若草の香り」がするとか「蒸米はもっと締めて」とか書いてあってもピンとこない。そこで今回の参加となった。

工房前に車を止める。澄んだ空気、残雪。工房からはもう米を蒸しているのか水蒸気が上がっていた。
工房の中では、今日の先生である遠山さんが待っていてくれた。遠山さんは、新潟で酒造りを学び、15年間本社蔵の杜氏として、そして後進にその職を譲った現在は、関谷醸造の酒造り全体を統括する傍ら、愛知県酒造技術者研修会会長という立場でもある。
特に印象に残った話は、「地元にこだわった酒を造りたい」という言葉である。流通や情報が発達することは、よいことばかりではない。それは多様性の喪失でもあるからだ。吟醸工房では、地元の湧き水を使い、地元酒造好適米夢山水を使っている。しかし、地元へのこだわりはそれだけではない。24時間体制だった酒造りを、通常の勤務体制で行うこと。つまりこれは、それぞれ家族を持つ従業員を一人の人間として企業が受け入れていくことであり、またそのような労働形態をとる企業を地元が認めていくことでもある。
杜氏から更にステップアップした遠山さんならではのお話だった。

蔵の中を一回り見せていただいた後、まず放冷作業。
「火傷しないよう注意してください。」
遠山さんの指示のもと、台の上に広げられた蒸米をほぐしにかかる。写真を撮るため、一歩下がったところからH氏とM氏を見る。もうもうと上がる湯気のなか、白衣で作業する二人は蔵人になりきっていた。

蒸米は、ちょうどタピオカが固まったような感じである。少し口に入れてみると普通のおこわに較べ随分硬い。この世界の言葉でいうとよく締めている印象だ。ほぐす。ひっくり返す。またほぐす。この作業を続けながら合間には仕込み中のタンクで、10日ごとの味と香りの変化や酵母の酒造りへ影響を教えてもらった。また、「ひねりモチ」やまだらに麹がつき、麹菌が芯まで入っている状態(突き破精)を実物で見せてもらったことも印象深かった。
多分今日は、踊が終わった仲添あたりなのだろう。十分放冷した蒸米をタンクの中に投入し、櫂を入れ作業は終了した。

 

その後、誠にみごとな30秒ずつ洗い、研ぎ、洗いを繰り返す洗米作業を見せてもらった。

昼食をとりながら、「山田錦55%BY17」「山田錦50%BY16」「夢山水BY16」「山田錦55%BY15トンネル貯蔵」の試飲となった(間違っていたらごめんなさい)。トンネルは少し熟成感、55%は新酒なので少し華やかな香と味、50%はそれが少し落ち着いた印象だった。全体として、きれいな酒であるのだが、十分うまみのある酒である。

試飲を続けながら遠山さんのお話を伺う。お酒の設計の話、夢山水の話、発酵温度の推移と味の話、仕込み水の話。途中、他の蔵の杜氏さんから相談の電話があったり、研究機関の方から電話があったりのあわただしいなか3時過ぎまでたっぷりお話を伺うことができた。
「ただ機械化をだめと決めつけるのではなく、機械をどう使うのか。測定した数字だけではなくその少し先を見通していくこと。そこに作り手の感性がある。」
売り方のテクニックではなく、機械化の上に感性の世界を築こうとする志。現代の労働形態や従業員のことを十分考え、無理のないカタチで次の世代に魂のこもったある技術を伝えようとする持続する意志。
最後に遠山さんは教えてくれた。
「和醸良酒ってよく酒屋が言うでしょ。和が大切なんです。」蔵の雰囲気はどうしても酒に表れるそうである。蓬莱泉の酒はどれもやさしい酒である。
また、飲みたい酒が一つ増えた。

報告:T

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